2019年7月の活動報告 : Belleグループ
2019年7月19日
Belle実験は、KEKつくばキャンパスの加速器を用いて電子と陽電子を衝突させ、大量のB中間子・反B中間子対を生成し、宇宙初期の謎の解明を目指す実験です。新たな発見に向けたデータ解析は現在も続いていますが、Belle実験のデータ収集は2010年に終了し、現在はBelle実験をアップグレードしたBelle II実験が行われています。Belle II実験では加速器や測定器を大幅に改良し、標準理論では予想できない新粒子の発見や消えた反物質の謎など、まだ見ぬ新物理の解明を目指しています。
Belle実験で注目している現象の一つに、B中間子からτ粒子を生じる崩壊があります。今回、Belle実験の解析結果から、τ粒子が生じるセミレプトニック崩壊(注)( B→D(*)τν:D(*)はチャームを含む中間子、νはニュートリノ粒子)が起こる分岐比と、電子またはμ粒子が生じるセミレプトニック崩壊( またはB→D(*)lν:lは電子またはμ粒子電子)が起こる分岐比の比R(D*)とR(D)の世界中の測定結果のこれまでの平均値は標準理論から3.6σずれており、新物理の発見に繋がる期待から注目されてきましたが、今回のBelleの解析結果を踏まえると、R(D*)とR(D)の測定結果の世界平均が標準模型から3.1σずれている事となりました。
この結果は過去の測定とも標準模型とも矛盾しないものとなりました。R(D*)とR(D)の世界中の測定結果のこれまでの平均値は標準理論から3.6σずれており、新物理の発見に繋がる期待から注目されてきましたが、今回のBelleの解析結果を踏まえると、R(D*)とR(D)の測定結果の世界平均が標準模型から3.1σずれている事となりました。
Belle II実験は、物理測定のためのデータ取得Phase3運転を2019年3月に開始しました。崩壊点検出器(VXD)設置前のPhase2運転時に判明した不具合を改善し、2019年5月14日からは安定して連続的な電子・陽電子ビームの入射が可能となりました。その結果、春の運転でおおむね目標とするデータ量を蓄積できましたが、Belle II検出器が受けるビームバックグラウンドは予想よりもまだ高いレベルのため、今後も改善に尽力します。春の運転で得られたデータを用いて、Belle II実験グループは基本的な性能を評価しながら夏の国際会議に向けて物理解析を進行中です。
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