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中性K中間子ビームの生成を確認
− J-PARC ハドロン実験施設 KLビームライン −
   
J-PARCセンター 

  E14(実験責任者:山中卓 大阪大学理学研究科教授、略称KOTO)※1の実験チームは、今回、J-PARCハドロン実験施設のKLビームラインからの二次粒子ビーム中に中性K中間子が生成されていることを確認しました。
 
茨城県東海村に建設されたJ-PARCのハドロン実験施設(図1)では、昨年度に完成したK1.8BRビームラインに引き続き、今年度は(K1.8BRの下流にあたる)K1.8ビームラインとKLビームラインの建設作業、および実験装置の設置作業を進めてきました。K1.8BR/K1.8ビームラインはホールの北側に位置し、電荷をもつK中間子、π中間子による実験を行います。一方、KLビームライン(図2)はホールの南側にあり、電磁石によって電荷を持つ粒子を取り除いて中性の粒子のみを導きます。KOTO実験チームは、二台の金属コリメータで口径を絞った”ペンシルビーム”と呼ばれるタイプのKLビームラインを建設し、2009年度秋からの加速器運転においてビームの性質を調べる準備実験を行っています。中性K中間子は通常の方法では直接測れないので、この粒子の崩壊で生じた二次粒子(電荷をもつπ中間子とガンマ線)を検出器で捉え、崩壊を再構成してそのもととなる粒子の質量を求めました。11月に短期間収集したデータを解析した結果、図3に示すように、中性K中間子の質量(500MeV/c2)に相当するピークを見いだす事に成功しました。図3の分布は、コンピュータシミュレーションで予想される分布と一致しています。
 
今後は、測定を続けて統計精度を向上させ、ビーム中の中性K中間子の生成量と運動量分布を求めていきます。今回の中性K中間子の確認成功は、K1.8BRビームラインでの荷電K中間子ビームの生成に続き、ハドロン実験施設での素粒子と原子核の実験が着実に進められている事を示すものであり、KOTO実験にとっては、大強度のビームにより中性K中間子の稀な崩壊を発見するという目的に向けて大きな一歩を踏み出したものと言えます。

 
 
関連サイト:  J-PARCのwebページ
http://j-parc.jp/
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K中間子ビームの生成を確認
        − J-PARCハドロン実験施設K1.8BRビームライン −

J-PARCハドロン実験施設K1.8BRビームライン完成
        − 二次ビーム取り出し開始 −

 

【用語解説】
 
※1 J-PARC E14 KOTO実験(中性K中間子稀崩壊実験)
J-PARCで作り出す大強度のビームを用いて中性K中間子の非常に稀な崩壊を測定し、粒子と反粒子の対称性(CP対称性)の破れの新たな起源を探る実験です。中性K中間子が数百億回に一度、中性π中間子と二つのニュートリノに崩壊する過程を発見することを目指しています。KOTOという略称は“K0 at TOkai”から来ています。実験チーム(図4)には現在、国内(KEK、大阪大、京都大、佐賀大、山形大、防大)から33名、海外(米国、台湾、韓国、ロシア)から29名が参加しています。
 
 

 
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図1 :2009年度秋の加速器運転に向けたハドロン実験施設の様子(左)とホールの平面図。KLビームラインはホール南側(右)の16度方向に取り出されます。
 

 
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図2 : KLビームライン。上流と下流の二台の金属コリメータと電磁石、ビームを止めるためのプラグからなっています。これらの機器はいまはシールドブロックで覆われていて、外から見る事はできません。
 

 
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図3 : 再構成された中性K中間子崩壊(KL→π+π-π0)の質量分布。
 

 
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図4 : 実験のロゴマーク(左)と実験グループの集合写真(右)。
 
 
 
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