2011年7月20日
7月11日(月)にERLシンポジウム、12日(火)、13日(水)にPFシンポジウムが、つくば国際会議場にて開催されました。PFシンポジウムは当初3月14、15日に予定されていましたが、震災により延期となり、新たにERLシンポジウムを加えての開催となりました。
ERLシンポジウムは、次世代の放射光光源加速器として検討されているエネルギー回収型ライナック(ERL)を「持続可能な社会を実現する放射光」と位置づけ、これからの社会に向けてERLが果たす役割を中心とした講演・討論が行なわれました。特別基調講演として小宮山宏氏((株)三菱総合研究所)をお迎えし、これからの社会では、エネルギー効率を重点に考えたグリーンイノベーション、活気ある高齢社会を目指すシルバーイノベーションが重要であるとの提言をいただきました。次いで行われた基調講演では、十倉好紀教授(東京大学大学院工学系研究科)により持続可能な社会の実現に向けて、室温超伝導や太陽電池などへ応用される強相関電子材料、省エネに結びつくマルチフェロイックスという物質材料など、基礎科学の観点から話されました。その後行われたセッションではERLのもつ高輝度かつ短パルスという特徴を利用して、光合成メカニズムの解明、不均一系触媒の機能解明や、光のエネルギーで物質相を高速に変化させる光誘起相転移、そしてますます微細化するデバイス開発研究の可能性について、それぞれの分野の第一線で活躍する研究者からの講演が行われました。
続いて3月に開催が予定されていた第28回PFシンポジウムが、多くの皆様からのご支援・ご協力をいただくことで延期開催されました。まず、東日本大震災で得た教訓を他の研究施設でも活かすべく、復興状況の報告や地震対策に関する情報交換などがなされました。その後、施設側から昨年度の研究活動、増改築されたビームラインなどの報告がなされました。文部科学省来賓によるご挨拶、機構長とのPFの将来に関する意見交換会に続いて、2件の招待講演では中村智樹准教授(東北大学)による小惑星探査機はやぶさが持ち帰った微粒子の分析結果と、北 潔教授(東京大学)による寄生虫を媒体とする感染症の治療薬をタンパク質の構造解析から開発するお話がありました。
引き続き行われたポスターセッションでは過去最高となる310件の発表がありました。今回から、PF懇談会により優秀な学生発表に対するPFシンポジウム奨励賞が新設され、2日目のPF懇談会総会において3件の発表に対して贈呈されました。
PFシンポジウム奨励賞の受賞者と受賞対象発表
矢嶋 赳彬(やじま・たけあき)東京大学大学院新領域創成科学研究科
「ダイポールエンジニアリングによる酸化物へテロ界面バンドオフセット制御」
榮永 茉利(えいなが・まり) 新潟大学大学院自然科学研究科山田研究室
「Bi2Te3のbcc構造への圧力誘起相転移」
胡 建波(Jianbo Hu) 東京工業大学大学院総合理工学研究科物質科学創造専攻
「Nanosecond time-resolved X-ray diffraction from laser-shocked YSZ」
2日目にはフォトンファクトリーの共同利用者と施設側での意見交換の場が設けられ、ビームラインの運用や、教育的施設としての運用など多方面からの意見が交わされました。最後には「PFからERLへ ~私の研究はどうなる?」と題されたセッションが行なわれました。PFの後継機として検討されているERLでの具体的研究に関して、各分野の共同利用者の方々から提起されたERLの光の性質に関する質問や要望に対して、意見交換や情報交換がなされました。
これまで得られた最新の研究成果を共有するとともに、将来に向けた様々な議論が交わされた3日間となりました。