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   image 宇宙誕生の時に迫る    2003.2.13
 
〜 リニアコライダー計画 〜
 
百数十億年昔、宇宙はビッグバンと呼ばれる爆発的膨張を経て巨大な時空と物質の世界として誕生しました。誕生直後の宇宙は超高温の世界で、高エネルギーの素粒子たちが互いに反応し、現われたり消えたりしていました。こうした高エネルギーの素粒子たちを実験で生み出す装置が加速器です。今日は、アジアを中心に世界から研究者がつくばに集まり、高エネルギー世界をつくり出して宇宙誕生の時に迫る新しい加速器の建設を目指して開かれた「ACFAリニアコライダーシンポジウム」についてお話しましょう。

リニアコライダー建設を目指す

シンポジウムは2月12日、つくば国際会議場で開かれました。シンポジウムの名称につけられたACFA(アクファ)は、前にもお話ししましたが、アジアにおける将来の加速器のあり方を検討する委員会のことです。リニアコライダーはこの委員会が中心になって建設を進めようとしている直線型の加速器を示しています。これは地下のトンネル内に直線状に配置した加速器で両側から電子と陽電子を加速し衝突させて世界最高のエネルギーを生み出す、長さ30kmにも達する巨大な実験装置です。シンポジウムでは、このリニアコライダーで世界最高エネルギーを得るために必要な加速器技術や、最高品質のビームをつくり制御する技術など、この計画に欠かせない新しい技術開発の現状報告と実験で得られる物理学の研究テーマ、その実現に向けてのシナリオが議論されました。

物質宇宙の根源を探る

21世紀の素粒子の物理学は、物質宇宙について解明されてきた様々な謎を統一的にまとめて大統一理論の完成へと向かいつつあります。その完成にはいくつもの課題が残っています。その一つは重さの起源に関わる謎の粒子、ヒッグス粒子の存在を解明することです。さらに時空と物質の関係を決めるには超対称性粒子の発見や、隠れた次元の存在をしらべるなど時空の構造を解明することも必要です。これらの大統一理論を完成に導くために必要な研究がリニアコライダーが生み出す高エネルギー状態で可能になると期待されています。

アジアの時代に向けて

リニアコライダーは、素粒子物理学の大変革をもたらす研究を可能にしてくれます。この施設は世界中の研究者が集う基礎科学の国際研究拠点になるに違いありません。今回のシンポジウムはACFAと日本の高エネルギー研究者が集まる委員会、それにKEKが共同で主催しました。世界最大・最高エネルギーの加速器をアジアにどのようにつくって行くのか、会場にはインドや韓国、中国などアジアをはじめ、米国、欧州などからも高エネルギー科学研究を進めている組織や機関の長、日本からも小柴昌俊さんを始めこの分野の指導者、さらにはこの建設や実験計画に参加しようとする400人近くの人々が一同に集まり真剣な討論を続けました。

今後はシンポジウムの議論をまとめ、具体的にリニアコライダーの実現に向けた活動が始まろうとしています。21世紀はアジアの時代だと言われています。これまでKEKは、国内外の多くの大学や研究機関と協力して、陽子シンクロトロン、トリスタン、KEKBなどの大型加速器を使い世界的に評価される研究活動を続けてきました。リニアコライダー計画は、「科学技術創造立国」日本がアジアの時代に世界へ向けて国際リーダーシップを発揮できる貴重な機会となるに違いありません。

※もっと詳しい情報をお知りになりたい方へ

→ACFAシンポジウムのwebページ(英語)
http://conference.kek.jp/acfalc/index.html
→JLCのwebページ
http://www-jlc.kek.jp/index-j.html

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[図1]imageスタジオR
リニアコライダーは、長さ約30kmの地下トンネルに建設されます。電子と陽電子の超高エネルギー衝突がおこり、10−18(ナノメーターの10億分の1)という微小世界での振る舞いを調べることができます。
拡大図(46KB)
 
 
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[図2]imageスタジオR
私たちの宇宙は3次元の空間と時間1次元を合わせて4次元の時空構造であると考えられています。しかし最近の物理理論、特に弦理論では通常の4次元以外の余剰次元があることを真剣に考えています。しかしそうした余剰次元は、あるとしても今までの日常経験や実験からは隠れていて見えません。リニアコライダーはそのような隠れた次元を探求するものです。
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[写真1]
シンポジウムで講演される小柴昌俊先生
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[写真2]
シンポジウム会場には400人近くの人々が集まりました。
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