これまでもご紹介してきたように、大強度陽子加速器施設(J-PARC)の建設は、茨城県東海村でKEKと日本原子力研究所が共同で進めています。今回は急ピッチで進められている建設工事の様子と、建設予定地で発見された揚浜式製塩跡で地元の小中学生たちが参加して行われた埋蔵文化財の発掘体験学習についてお知らせします。
土木・建築工事の現況
東海村の建設サイトでは、現在、土木・建築工事が本格化しています。精密機器である加速器を設置するための建屋は普通の建物と違いその重量や特性を考慮した緻密な設計が必要となります。まず建設地の特性を知るための地盤調査が行われた後、各建屋の詳細な設計が行われました。陽子ビームは400MeVリニアック(線形加速器)、3GeVシンクロトロン、50GeVシンクロトロンの順に段階を追って加速されますが、建屋もおおむねこの順番に沿って、建設が進んでいきます。現在はリニアック棟や3GeVシンクロトロン棟の建設が精力的に行われており、50GeVシンクロトロン建設地の一次造成や掘削工事も行われています。ここで使われる加速器などの装置の製作も土木・建築工事と平行して進んでいます。例えば、50GeVシンクロトロンでは約100台の大型偏向電磁石(1台約33トン)を使用しますが、これらの実機はすでに発注され、順次納入されています。
工事予定を調整し、埋蔵文化財調査も
工事開始に先立って埋蔵文化財調査のための「試掘」を行ったところ、施設建設地の一部に中世から近世時代のものと推定される塩田らしい埋蔵文化財があることがわかりました。この遺跡は茨城県により「村松白根遺跡」と名づけられましたが、KEKでは工事工程の一部を組み替えて、茨城県文化課の指導を受けながら埋蔵文化財の発掘調査を進めています。調査は茨城県教育財団に委託しており、調査員のもとで毎日何十人もの作業員の方々による発掘作業が進んでいます。8月5日から7日には、東海村の小中学生を対象にした発掘体験学習を行い、保護者のみなさんなどをあわせて約70人が参加されました。遺跡に関する詳細については茨城県教育財団のサイトをご覧ください。
J-PARCが目指すもの
J-PARC(ジェイパーク)は、KEKと日本原子力研究所が共同で建設を進めている加速器施設です。これまで国内の陽子加速器の最高はKEKにある120億電子ボルト(12GeV)陽子シンクロトロンでしたが、J-PARCが完成すると、約4倍の500億電子ボルト(50GeV)まで陽子を加速することができます。ビームの強度もこれまでの100倍以上と、世界最高になり、この陽子ビームから生じる中性子、中間子、ニュートリノなどの大強度二次ビームを用いて、原子核素粒子物理から物質生命科学まで、幅広い範囲の研究に用いられる世界の研究センターとなることをめざしています。
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