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花咲く季節のKEK 2007.4.12 |
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〜 総研大に新入生 〜 |
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何かと慌しい年度の切り替わりの時期ですが、皆様、この季節をいかがお過ごしでしょうか。旧年度の締めくくりと新年度のスタートに忙しい時を過ごす中にも、移ろいやすい気候とともに春は確実に訪れています。KEKの敷地で、今年初めてうぐいすの鳴き声を聞いたのは、春分の日の翌々日。「ホー、ホケキョ」とお馴染みの鳴き声も新鮮に感じるのは、そこに新しい季節の訪れを重ねて聞くからでしょうか。敷地内各所の桜はちょうど年度をまたぐように見頃を迎えました。春の陽射しに白く透けて枝々に重なる桜の花は、青さを増しつつある空によく映えます(写真1)。 そんな季節を傍らに感じながら仕事をしていると、敷地内で行き交う人にもまた、季節感があります。春休みでKEKコミュニケーションプラザに来ている小学生と母親、4月の異動でまだ新しい職場に席が温まらない同僚、春の陽気に誘われて昼休みにウォーキングを始めた職員、などなど。耳慣れない声色に振り返ると、宿泊施設からセミナーホールへの朝の道を、談笑しながら若い学生と思しき一団が。千葉大学理学部物理学科の新入生が、この季節にガイダンスを兼ねた研修にKEKを訪れるようになって3年目。今年も45人の新入生が4月3〜4日にKEKを訪れ、特別講義を受けたり加速器施設の見学をしました(写真2)。 KEKの新入生? 新入生は、ここKEKにもいます。大学ではないのに? KEKには、総合研究大学院大学の高エネルギー加速器科学研究科の加速器科学専攻、物質構造科学専攻、素粒子原子核専攻が設置されていて、KEKで行われている研究活動を基礎に大学院教育が展開されているのです(写真3)。研究・開発・実験の現場で活躍するKEKの研究者が総研大の教員職も兼ね、入学してくる大学院生の指導にあたっています。大規模な加速器施設を使って研究が行われているKEKでの大学院生活は、大学のそれとはまた一味違った?臨場感あふれるものと言えるでしょう。
平成18年度からは5年一貫制の博士課程による教育体制に移行し、学部を卒業したばかりの学生にも加速器科学の最先端の施設を使った大学院教育を受けられる道を開きました。総研大高エネルギー加速器科学研究科の詳細については、http://www.kek.jp/sokendai/index.html をご覧ください。 17人の新入生 その総研大高エネルギー加速器科学研究科に、今年は17人の新入生(5年一貫制博士課程入学者12名、博士後期課程入学者5名)を迎えました。4月4日には、新入生ガイダンスが行われ、やや緊張した面持ちの学生たちに、北澤良久研究科長(KEK素粒子原子核研究所・研究主幹)から学位取得などに関する説明が、また鎌田進加速器科学専攻副専攻長(KEK加速器研究施設・教授)からカリキュラムなどに関する説明がなされました(写真4)。また、夕方には、各専攻で指導に当たる研究者を交えた懇親会が開かれ、指導教員や先輩学生、入学同期生との親交が始まりました。 何人かご紹介 歓談の続く懇親会場にお邪魔し、3人の新入生に話を聞きました(写真5)。 久保毅幸さん(素粒子原子核専攻/博士後期課程入学) − どうして総研大を選んだのですか? 研究する環境として、KEKの理論部には教員からポスドクまで多くのスタッフが居るのが魅力です。様々なキャリアを積んだ人たちから教わることはとても多いんです。それから、尊敬する先輩で、現在研究の第一線で活躍している人がいるのですが、その人が総研大の博士課程で研究をしていました。自分もその先輩が指導を受けた素粒子理論の先生の下で研究するのですが、その先輩の存在も総研大を選んだ理由のひとつです。 − 研究上の関心事は? 近い将来に稼動予定のCERN(欧州合同原子核研究機関)のLHC加速器での実験で、どういう結果が出るかを楽しみにしています。今後の新しい物理に少しでも貢献できるような研究をしたいと思っています。 高橋義知さん(加速器科学専攻/5年一貫制博士課程入学) − 学部の時は何を専攻していたのですか? 理学部物理学科で、理論の勉強をしていました。 − 物理から加速器への転向ですね。 はい。理論を検証するためのツールとしての加速器に興味を持ちまして、自分でも加速器を作ってみたいと思ったんです。総研大の存在は友人に教えてもらって、それで説明会に参加して加速器科学専攻に進もうと。総研大での博士課程の期間は、まずは、加速器分野での自分の適性を見極めたいと思っています。 − 将来の抱負は? 加速器の技術革新ということを考えていけたらと思っています。新しい加速器、手軽でもっとコンパクトな加速器を作りたい、そうなれるようにがんばります。 小谷佳範さん(物質構造科学専攻/博士後期課程入学) − 専門は何ですか? 半導体物性です。以前は民間企業で半導体部品の開発を担当していたこともあります。 − 企業での経験もあるのですね。企業での研究と研究機関での研究は違いますか? 企業の良いところは、取り組んだ課題が製品化されたときに目に見える成果として現れてくるところですね。研究機関での研究は、すぐには世には出なくても、こだわった研究ができる、これがいいところだと思います。今回、総研大を選択したのも、そういう時間が自分に必要と感じたからというのもあります。 − 将来は研究職に? はい。同級生が学位を取って研究者として活躍しているなか、「遅れを取った」という感じです。ただ、社会教育ということもやっていきたいと思っています。自分のやっている研究を世の中に伝えていく、そういう取り組みも研究者には大切だと感じています。 − 確かに、研究者のアウトリーチの重要性は高まっていますね。 高度な技術や知識が人々にとってブラックボックスの中というのは、あまりにもったいないと思います。最先端の研究成果を知識として誰もが享受できる、そんな社会にしたいですね。 4月5日には、総研大本部のある神奈川県の葉山で入学式が行われ、総研大での大学院生活が始まりました(写真6)。新入生の皆さん、今後の活躍を期待しています。
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