中性子回折法による新型電池の研究



電池の仕組みはどうなっているの?

 ■普通の電池の仕組み

 普通の電池は、2枚の電極板の間に電解液がある構造をしています。 負極の電極板が電解液に溶け出すときに、正イオンとなり、電子を電極板に残します。 この電子が電線を伝わって仕事をし、正極にたどり着きます。 ここで、電解液中の物質がこの電子を受け取り化学反応をします。


このように、普通の電池は化学反応によってエネルギーを取り出しているのです。
この化学反応を逆に進めることができるタイプの場合、つまり、元の状態に戻すことのできる電池を二次電池といいます。一般的に、元に戻すために外部の電気エネルギーを用いますが、これを充電と呼んでいます。


 ■リチウムイオン電池の仕組み

 充電すると、リチウムイオンはリチウムを含んだ金属酸化物からなる正極から取り出されて負極の炭素結晶の層間やナノサイズの空隙(ボイド)中に挿入されます。 電池を電子回路等に接続して使用する時(放電時)には、負極に挿入されたリチウムイオンが徐々に抜けていき正極の結晶中に戻ってきます。


この時電子は負極から電子回路等を通って正極側に戻りつつ仕事をすることになります。 リチウムイオン電池で特徴的なのは、充・放電の際にリチウムイオンが両極間を移動するだけで電解液は化学反応をおこさないことです。

 負極の炭素材料にはいろいろな種類のものがありますが、これまでのリチウムイオン電池の性能向上(8年前に登場したときに比べ約2倍のエネルギー密度)は主として最適な炭素材料開発の上になりたっていたといえます。
 一方正極としてはずっとリチウムとコバルトの酸化物が用いられてきましたが、負極の性能向上に比べ正極の開発は進んでいませんでした。負極性能の向上に限界が見え始めた今、正極側の性能の向上が今後ますます重要といえます。