中性子回折法による新型電池の研究



私たちの研究 2 - 加速器を用いた中性子回折法 -
 

 ■加速器を用いた中性子回折法について

 陽子加速器、陽子を衝突されるターゲット、ターゲットから発生した中性子を減速させるモデレータなどからなる中性子発生源からは、50ミリ秒ごとにパルス状の中性子が1012個も飛び出します。
発生した中性子はそのエネルギーの違いに対応して速度が違いますので、速い中性子は早く、遅い中性子は遅く検出器に到着します。 よって、中性子が検出器に到達した時刻を調べれば、中性子の波長を精密に調べることができるのです。


 この方法は中性子の飛行時間を測定することからTOF法と呼ばれています。 50ミリ秒ごとにこのことが繰り返され、データとして蓄積されていきます。

※TOF = time-of-flight
(飛行時間)

図はダイアモンド粉末を測定した時のパターンで、ブラッグ反射が多数測定されていることが分かります。



 
 ■高エネ機構で開発された中性子回折装置

 我々は最近、斬新な光学系を採用したTOF型中性子回折装置を開発し、高エネルギー加速器研究機構に設置しました。 この装置ではHe型位置敏感型検出器(PSD)が試料のまわりじゅうに配置されています。


写真:Sirius

 中性子がPSDの一つ一つのピクセルでカウントされるたびに、その時刻と位置の情報が一時記録され、コンピュータにより即座に処理されて回折強度のヒストグラムがつくられます。検出器立体角は従来型の回折装置の100倍に達し、これにより大強度と高分解能を同時に実現させました。数百に及ぶ検出器の回路の費用を大幅に軽減し、さらにエンコーディングやヒストグラミングを行わせるため、独自のデータ処理システムを開発しました。

 またTOF法では中性子の飛行距離を伸ばすことにより、高い精度で波長を求めることが可能となります。しかしただ距離を伸ばすだけですと距離の自乗で強度が弱くなってしまいます。それを避けるために新たに開発した装置では30mにも及ぶスーパーミラー型中性子導管を用い、これにより中性子をロスなく輸送できるようになり、高強度と超高分解能を同時に実現させました。

この装置は全天で一番明るい星から名前をとって Sirius と呼ばれています。

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