中性子回折法による新型電池の研究



研究の例 1

 ■正極材料リチウムニッケルの研究
東工大菅野先生、三重大平野先生との共同研究



 LiNiO2はLiCoO2に比べ比較的安価で、理論的な容量の上限がリチウムスピネルの2倍と高い物質です。この物質はリチウムとニッケルの組成比1:1を合成するのが難しいのですが、組成比が1:1からずれるにつれサイクル特性が悪くなります。 その原因を知り合成法の改良へとフィードバックさせるために結晶構造を調べました。

その結果、組成比が1:1からずれた試料では、 結晶構造中のリチウムの層にニッケルが入っていて、充電によりリチウムが抜けていく際にリチウムの出入りを邪魔していることがわかりました。


 ■電池の充放電の様子を中性子で直接観察する
東京理科大中井先生、寺田先生との共同研究


 一般に電池は様々なコンポーネントからなります。 それぞれのコンポーネントの材料開発のための一つの方法は、電池反応を直接中性子で調べて問題点をさぐることです。
すなわち充放電の様子を中性子で直接観察することにより、それら全てのコンポーネントが充放電過程でどう変化するか、相転移や化学反応の様子を直接調べることができます。

たとえば二次電池の特性劣化の原因を、電池反応を直接中性子で見ることを通して調べることが可能となります。


写真:電池の充放電時の結晶構造変化観察装置

 写真の装置の中に電池が入っており、そこに直接中性子をあてて充放電をさせながら結晶構造変化を調べています。
一方、使用途中及び高温保存した多くの電池を解体して、正極の変化を中性子で調べる実験は、モデル電池ではなく、実用電池そのものを直接調べることができるという利点があります。

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