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陽子シンクロトロン加速器の特長は、図に示すように、小形のシンクロトロン「ブースター」と大型のシンクロトロン「主リング」で段階的に陽子を加速することである。主リングはエネルギー120億電子ボルト、4秒に1回加速を行い、毎秒約1兆個の陽子(電流に換算すると0.2マイクロアンペア)が加速される。
ブースターは、陽子ビームを毎秒20回、5億電子ボルトまで加速することができ、4秒あたり9パルスのビームが主リングに送られる。残りの9割近くのビームは「中性子中間子研究施設」に送られている。
昭和55年に陽子シンクロトロンに併設された中性子中間子研究施設では、ブースターから得られる大強度陽子ビーム(電流に換算して5マイクロアンペア)を利用して、大量の熱中性子、冷中性子及び超低速のミュオンビームを発生する。最近注目されている高温超伝導体構造を決定した研究にみられるように、中性子中間子研究施設で得られるパルス状の中性子、ミュオンを使った中性子散乱やμSR(ミュオンスピン共鳴)は、物質科学の研究に欠かせない基本的な実験手段となっている。また、ここでは、ブースターの陽子ビームを用いて、筑波大学陽子線医学利用研究センター分室において、陽子線がん治療研究が行われている。
このように陽子加速器は、我が国唯一の高エネルギー陽子加速器として多彩な研究分野で利用されており、その分野もさらに広がりつつある。また、世界的にもユニークな存在となっており、海外の研究者の利用申し込みも多い。
(1)前段加速器→(2)線形加速器→(3)ブースター→(4)主リングへと順々に加速する。 |
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