この事業(サマーチャレンジ)は、KEK一般寄附事業から支援を受けています

演習課題と代表担当教員の紹介

演習 1 班   反粒子を捕まえよう
        ~最軽量原子ポジトロニウムの崩壊観測実験~

  電子の反粒子である陽電子は、電子と束縛し、準安定状態ポジトロニウムを作ることができます。 電子・陽電子の合計スピン 1 のオルソポジトロニウムは 142 ナノ秒と比較的長寿命なため、 崩壊過程を観測することができます。陽電子を発生させ、ポジトロニウムの生成・崩壊を観測してみましょう。
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東京都立大学   汲田 哲郎
専門分野: 高エネルギー物理学、ビーム物理学、陽電子科学
研究テーマ: ATLAS実験、ポジトロニウム崩壊実験
趣味: 格闘技観戦
ひとこと: この演習では、放射線検出、電子回路による信号処理とデータ収集、コンピューター上でのデータ解析といった、 素粒子物理学実験の全ての要素を学ぶことができます。 反粒子が理論上だけの存在ではなく、身近なものであることを実感してください。

 

演習 2 班   ワイヤー1本で素粒子をとらえる
        ~素粒子・原子核実験の心臓部分「ワイヤーチェンバー」を作ろう~

  素粒子・原子核物理の実験研究に1960年代後半に情報革命が起こりました。 それまでは、放射線の通った軌跡を知るのに霧箱・泡箱を使い写真を撮影するような方法しかありませんでした。 しかし、G. Charpakの発明した Multi-Wire ProportionalChamber は電子回路と組み合わせることで 短時間に大量のデータを収集することを可能にしたのです。 本演習では、その原理部分を製作し実際に測定を行います。
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東北大学   金田 雅司
専門分野: ハドロン・原子核物理(非摂動領域のクォーク多体系)の実験研究
研究テーマ: ストレンジネス (s クォーク) を含む、ハドロン・原子核物理。 u, d だけではなく、s も含む フレーバー SU(3) に拡張した核力の研究。
趣味: 料理(特にお菓子作り)。 ここ数年は、スマートフォン向けの拡張現実技術を利用したオンライン・位置情報ゲームの為に色々な所に行くこと。
ひとこと: 日本やアメリカやヨーロッパにある加速器を使ったハドロン・原子核物理の実験研究を行っています。 大学院時代はCERNで行われていた実験に参加していました。 そのあとの、ポスドク時代にはアメリカのブルックヘブン国立研究所で実験に従事していました(留学ではなく現地雇用)。 海外での研究生活に興味があれば何でも聞いて下さい。

 

演習 3 班   先進加速器を体験しよう
        ~実験と電磁波シミュレーターで体験する先進加速器~

  先進の高周波加速器として、エネルギー蓄積効率を高くする超伝導などの高周波空洞や エネルギー密度を高くするための高い周波数の加速器など、近年世界的にも様々な発展が見られます。 これらを実験と電磁波シミュレーションで体験してもらいます。
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KEK 加速器   吉田 光宏
専門分野: 加速器
研究テーマ: 誘電体を用いた新奇加速器開発
趣味: ピアノ
ひとこと: 高エネルギー物理は加速器と共に発展してきました。 少しでも素粒子分野の未来について考えるきっかけになってもらえればと思います。

 

演習 4 班   磁気スペクトログラフ
        ~ 磁場の中での荷電粒子の振る舞い ~

  磁場による粒子のエネルギー(運動量)分析は素粒子原子核実験では標準的な手法です。 本物の電磁石を運転し、放射線検出器を組み込み、 原子核の崩壊によって放出される電子のエネルギー分布を測定し、 その物理過程に関わる物理量を導き出します。
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大阪大学核物理研究センター, KEK 素粒子原子核研究所   野海 博之
専門分野: ハドロン原子核物理学
研究テーマ: 水素原子より重いクォークをハドロンに埋めこむ研究
趣味: 沿海汽水域を中心とした水産資源に関する調査のためのフィールドワーク (最近、いけてないけど、、、。)
ひとこと: 本格的な電磁石の運転を通して電磁気学の“正しさ”を実感し、 原子核の壊変により放出される電子の運動を分析することで“見えない”ニュートリノの存在を確かめてみませんか。

 

演習 5 班   光子を捕まえる

  「光」は、身近な存在ですが、不思議な性質を持っています。光は波の性質と 粒子の性質を同時に併せ持っていて、どんな物質も光より速く移動する事は出 来ません。この演習では光の粒子性を確認するとともに光速度の測定に挑戦します。
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大阪大学   川畑 貴裕
専門分野: 原子核実験
研究テーマ: 原子核におけるクラスター構造と宇宙における元素合成過程
趣味: 旅行、ソフトボール、飲酒
ひとこと: わたしたちにとって身近な「光」。 教科書には粒子としての性質を持つと書いてありますけれど、本当に粒子なのでしょうか? ひと粒、ふた粒、... と数えることができるのでしょうか? 本当に宇宙最高の速度で飛行しているのでしょうか? 全国から集まった仲間たちと、実際に光子を捕まえて調べてみましょう!

 

演習 6 班   時間反転対称性の破れの探索 フェルミオン電気双極子能率

  精密測定を通じた素粒子実験の一つである、電気双極子能率 (EDM) の探索を行います。 大きな EDM の存在は標準模型を超える物理の証拠になります。 スピン偏極したXe原子核が電磁場中で歳差回転する周波数を核磁気共鳴 (NMR) の手法で測定し、 電場による周波数の変化から EDM を探します。
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名古屋大学 素粒子宇宙起源研究所   北口 雅暁
専門分野: 素粒子原子核物理実験
研究テーマ: 中性子基礎物理
趣味: 写真とドラえもん
ひとこと: 私は低エネルギー現象の精密測定で素粒子物理を研究しています。 この演習ではその一端を体験し、実際に測定を目指します。 素粒子物理は高エネルギーだけじゃない。アイディアで勝負してみませんか。

 

 

演習 7 班   量子の波動性と粒子性
        ~1光子を発生させて干渉を見る~

  量子力学の講義で波動関数による記述を学んだ皆さんは, 量子が波であり粒子でもあることにすっかり慣れたかもしれません。 可視光は,その波動性,粒子性がどちらもよく見える観測対象です。 この実験では,高エネルギー実験の検出器で実際に用いられている最新の光検出デバイスで, LED から出る光の数を測定・コントロールし, 光子数が数えられるような状況でも干渉しているかを確かめます。
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神戸大学理学研究科 物理学専攻   山崎 祐司
専門分野: 加速器を用いた高エネルギー物理実験
研究テーマ: LHC加速器(欧州CERN研究所) におけるアトラス実験での新物理探索・アップグレード
趣味: 地図,不動産広告,オシロスコープ,もちろん実験データのグラフなど, 2次元に情報を可視化したものが大好きです。 アマチュアオーケストラに所属しています。楽器はオーボエです。
ひとこと: 実験を成功させるには,その時点での結果の解釈,状況判断が重要です。 グループでの実験では,それを共同研究者にうまく説明できるかで, パフォーマンスが変わっていくことが体験できるでしょう。 また,グループ内で役割分担をしながら実験を進めていくので, 皆さんそれぞれ得意なことが,きっと見つかります。 皆さんとお会いできるのを楽しみにしています。

 

演習 8 班   宇宙線観察で学ぶ粒子の崩壊とスピン回転

  ミュオン(ミュー粒子)はパイオンの2体崩壊によりスピンの向きがそろう「ミクロな磁石」です。 ミュオンを物質中に打込むと、停止位置の磁場を感じスピンが歳差運動します。 ミュオンが崩壊する時、放出陽電子はスピンの向きに出やすいので、陽電子の測定から、 ミュオンスピンの向きが分かり、物質中の磁場が分かります。 本演習では、宇宙線ミュオン観察によりこのような粒子崩壊とスピン回転を学びます。
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国際基督教大学   久保 謙哉
専門分野: 放射化学
研究テーマ: ミュオン化学、インビームメスバウアー分光
趣味: 散歩、禁カップ麺
ひとこと: 「スピンは天からの贈り物」
 
 
 

 

演習 9 班   放射線検出器を作ろう
        ~IoT 技術と物理実験~

  世界中で行われている様々な素粒子・原子核における物理実験では、 衝突等により生成される放射線を観測するための粒子検出器を製作し、 電気回路等を用いてその信号を収集し、コンピュータ・プログラムを用いたデータ解析により、 衝突による物理現象を調べます。この演習では実験装置を製作し、 このような ① 粒子検出、② 信号測定、③ データ解析等、 全ての重要な実験過程を実際に体験してもらう事が目的です。
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筑波大学 数理物質系 物理学域   江角 晋一
専門分野: 高エネルギー原子核実験
研究テーマ: クォーク・グルーオン・プラズマと QCD 臨界点探索
趣味: サッカー・音楽・物理解析
ひとこと: 物理実験の最新技術と醍醐味を楽しみましょう!
 
 
 
 

 

演習 10 班   自然放射線を理解しよう
        ~GM カウンターの製作から線量測定まで~

  放射線を観察する装置に霧箱があります。 霧箱で見える世界、 すなわち放射線の筋が常に飛び交っている世界というのはあなたがいるその空間で実際に起こっていることです。 本演習では身の回りの放射線である自然放射線に焦点を当てて実習を行います。 GM 管を用いた放射線計数器を自作の電子回路で製作し、場所を変えた測定をしながら、 自然放射線の発生源やその正体について理解を深めます。 最後に線量について調べ計数器を簡易線量計へと発展させ、測定を通じて自然放射線量を理解します。
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高エネルギー加速器研究機構 放射線科学センター   岩瀬 広
専門分野: 放射線シミュレーション
研究テーマ: 加速器周りの放射線の測定とシミュレーション
趣味: とある球技
ひとこと: 放射線は自分で測ると案外分かるのですが、 適切な測定や評価ができていないと簡単に誤解に陥る油断ならない存在でもあります。 測定器の製作から始めるので演習時間内での測定が大変かもしれませんが講師ともども努力して演習を成功させましょう。