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2023.5.8


QUPの研究者が、重力波で最古の宇宙を見る新しい方法を提案しました。

新緑が美しい季節となり、今年も屋外でビールの泡を楽しむことが多くなりました。量子場計測システム国際拠点(QUP)では、極限環境でできる泡を研究しています。

QUPおよび高エネルギー加速器研究機構(KEK)の理論センターに所属する研究者、ウォロディミル・タキストフ助教は、インフレーションによって宇宙が指数関数的に膨張したビッグバン直後に、何が起こったのかを追求しています。

ウォロディミル・タキストフ助教

この度、タキストフ助教が、カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)のロザノフ博士とともに、Physical Review Lettersに発表した研究では、インフレーションを引き起こしたインフラトン場が振動する際に、多くの宇宙論でオシロンと呼ばれる長寿命の「泡」のような大質量のものが局所的に形成され、それが崩壊する際に、特徴的な重力波を発生させることを示しました。

今後の観測でこの重力波による時空の構造の乱れが検出されれば、宇宙の始まりに関する他に類を見ない新しい知見が得られます。これは、従来宇宙の最初期を知るために研究されてきた宇宙マイクロ波背景放射(CMB)からとは異なる情報になります。

「この結果は、非常にエキサイティングです。というのは、宇宙の始まりに関する謎を、様々な異なる視点で理論と比較することができるからです。しかし、その意味を十分に探究するためには、さらに多くの研究が必要です。」タキストフ氏は語ります。

QUPでは、宇宙の最初期に関する幅広い研究を行っています。現在進行中のLiteBIRD計画の主目的も、CMBの偏光の観測を通じて原始重力波の探索し、インフレーション期の宇宙の状態を探ることです。タキストフ氏は、QUPや理論センターの研究者たちとともに、別な視点から、宇宙最初期の謎を解明する理論的手段を模索しています。

研究の詳細は、5月2日にPhysical Review Lettersに掲載された。

論文情報
掲載誌: Physical Review Letters
タイトル: Enhanced gravitational waves from inflaton oscillons
著者: Kaloian D. Lozanov, Volodymyr Takhistov
DOI: 10.1103/PhysRevLett.130.181002

要旨(PRL): journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.130.181002
プレプリント(arXiv.org): https://arxiv.org/abs/2204.07152

問い合わせ先
QUP 戦略室
Email: qup_pr-at-kek.jp
* atを@に変えてください。

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