拠点について

概要

宇宙と素粒子の研究のための量子場計測システム国際研究拠点(QUP)は、日本の高エネルギー加速器研究機構(KEK)がホストする世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の国際研究センターです。QUPは、最先端の量子計測技術と加速器科学を融合することにより、基礎物理学に新たなフロンティアを切り拓くことを目指しています。
従来の素粒子物理学は主として衝突エネルギーの向上(エネルギー・フロンティア)によって発展してきましたが、暗黒物質、隠れたセクター、既知の物理法則からのわずかなずれといった自然界の最も重要な謎の多くは、極めて弱く相互作用する現象の中に存在している可能性があります。QUPはこれに対し、超高感度量子センサーを用いて「インテンシティ(強度)」および「プレシジョン(精密)」の観点から弱結合領域を探査するという、補完的かつ革新的なアプローチを導入しています。この新しい観測手段を、私たちは「宇宙を見る新しい“Quantum Eye”」と呼んでいます。
KEKが有する多様なビーム施設と高度な実験インフラを活用し、QUPは概念創出、検出器開発、精密測定、そして科学的発見に至るまでの研究サイクル全体を加速します。拠点では、検出器システム学、実験物理学、高度データ解析を密接に統合し、これまで到達できなかったパラメータ領域の探究を可能にします。 QUPは本質的に国際的な研究拠点です。英語を主要な運用言語とし、世界の主要研究機関と密接に連携しています。これらの国際的な協力関係を通じて、QUPは基礎科学と技術革新の双方を推進するとともに、オープンで学際的な環境のもと次世代研究者の育成を進めています。
さらにQUPは、基礎研究にとどまらず、環境モニタリング、産業、社会への応用も視野に入れ、先端計測技術や放射線検出技術の展開による幅広い社会的インパクトの創出を目指しています。科学的発見と社会的ニーズを結び付けることで、QUPは科学と社会の双方に持続的な価値をもたらすことを目指しています。


QUPのロゴ

ロゴは、顔の形をしたウロボロス(Ouroboros)が「QUP」を取り囲むデザインとなっています。ウロボロスとは、自らの尾をくわえる蛇または竜を表す象徴であり、無限、再生、循環を意味するものとして広く解釈されています。
ノーベル賞受賞物理学者シェルドン・グラショーは、このウロボロスを用いて宇宙の階層構造を表現しました。宇宙は、素粒子、原子核、原子、分子、恒星、恒星系、銀河、銀河団、そして宇宙全体へと、各スケールにおいて階層的な構造を持っています。
宇宙は巨視的には極めて大きなスケールを持ちながら、その振る舞いは微視的な素粒子の法則(量子場)に支配されています。この極大と極小の不可分な関係性はウロボロスの象徴性と重なります。こうした物理学的世界観に敬意を表し、本拠点のロゴデザインにはウロボロスを取り入れています。

QUPの
研究目標

QUPは、基礎物理学と量子計測の最前線を切り拓くことを目的として、科学と技術を統合した以下のミッションを推進しています。

1. 自然界の弱結合フロンティアを探究します
超高感度量子計測システムの開発と実装により、軽い暗黒物質、アクシオン、隠れたセクターを含む、これまで未発見の粒子や相互作用(Portal Physics)の探索を行います。

2. 精密科学のための「Quantum Eyes」を確立します
超伝導センサー、量子デバイス、半導体検出器、高度な読み出しシステムを基盤とする次世代の検出・計測技術を創出し、量子コヒーレンスを利用したこれまでにない感度と精度を実現します。

3. 技術から発見までの研究サイクルを加速します
KEKが有する独自の加速器およびビーム施設を活用し、検出器研究開発、実験実装、精密測定を密接に統合することで、概念創出から科学的ブレークスルーに至るまでの時間を大幅に短縮します。

4. 新しい物理のフロンティアを開拓し、広い社会的インパクトを創出します
革新的なアプローチにより基本相互作用や重力の理解を深めるとともに、学際的かつ国際的な研究エコシステムを育成します。次世代研究者の育成と先端計測技術の産業・社会への展開を通じて、基礎科学を超えた長期的価値の創出を目指します。

QUPの行動規範(Code of Conduct)

QUPの
特徴

世界トップレベル研究拠点(WPI)として、QUPは高い自律性と国際的な存在感を備えた研究拠点としてのアイデンティティを確立しています。

I

世界的な量子イノベーションの推進役です
量子計測技術と基礎物理学の融合を先導し、組織の枠を超えて科学と社会の双方に持続的なインパクトを生み出します。

II

独自の検証エコシステムを有しています
新しい検出器コンセプトの創出から実証(Proof of Concept)までのサイクルを迅速に進める機動的で自律的な研究環境を構築しています。世界最高水準の加速器施設を強力な発見の基盤として活用しています。

III

知の国際循環を担うグローバル拠点です
海外サテライトとシームレスに連携する真に国際的な研究センターとして、国境を越えた共同研究、人材の流動性、多様性を促進する中核拠点となっています。

IV

学際融合を先導する開拓者です
素粒子物理、工学、データ科学の専門家を結集し、新たな学問領域(計測システム学)の創出を促すとともに、分野の境界を越えて挑戦する次世代研究者の育成を推進しています。

QUPの目標

 

QUPの目標は、上記のミッションとアイデンティティに基づいて、以下のとおり定めます。

1)

 世界最高水準の研究環境を日本に構築し、検出器および計測に関する研究開発を継続的かつ体系的に推進します。

2)

 高感度計測により極微弱な相互作用を体系的に探査し、広範なパラメータ空間を包括的にカバーします。

3)

 基礎物理と現実社会の応用を結ぶ、機動的かつ分野横断的な研究ネットワークを形成します。

4)

  計測システムの「脳」に相当するデータ解析の新しい手法を開発し、宇宙・素粒子研究へ応用

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