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2023.8.24


QUPの研究者が、新量子場探索の新しい手法を提案

QUPでは,新しい量子場の発見を進めています。自然界には4つの力がありますが、(電磁気力,弱い力,強い力,重力)、新しい量子場があると4つの力以外の別の新しい力を生み出す可能性があります。これまで、新しい力の発見に向けて多くの実験・観測が行われており、星のような大きなスケールから1センチメートル程度のスケールまで多くの高精度の検証がありますが、100万分の1メートルなどマイクロメートルの領域で新しい力を探るのは比較的困難でした。今回、Physical Review D誌に発表した論文では、 QUPの研究者がこの領域で精度のよい測定ができる可能性を示しました。

理論物理を研究している,QUPの中山主任研究員は言いました 「新しい力を探すには,2つの物体を近づけてその間の力を測定するのが基本です。しかしながら,マイクロメートル領域では、不要な力(カシミール力)が生じてしまい,新しい力の効果を隠してしまいます。今回,ワイルセミメタルを導入するとカシミール力をゼロにでき,新量子場がつくる力を高精度に測定できる可能性を理論的に示しました。」

この論文に大きく貢献し、社会実装へ向けてカシミール力の研究を実施してきた飯塚英男主任研究員は言いました。 「私たちは、カシミール効果を研究していて、その大きさを小さくできる事は知っていましたが、QUPの研究者で議論を重ね,カシミール力を制御することで新しい力を計測する手段となりうることを見出しました。QUP活動以前では,思いもよらない展開に驚き,うれしく思っております。」

QUPの羽澄拠点長は続けます。 「QUPは,異なる専門をもつ研究者が出会う研究機関です。今回は、理論物理の研究者と、産業界の研究者のシナジーで、新量子場探索の新しい手法を提案できました。」

QUPでは,このアイデアを活かして、100万分の1メートル領域での、精度よい力の測定を進めて行きます。

論文情報
掲載誌: Physical Review D
タイトル: Zero Casimir force in axion electrodynamics and the search for a new force
著者: Yohei Ema, Masashi Hazumi, Hideo Iizuka, Kyohei Mukaida, and Kazunori Nakayama
DOI: 10.1103/PhysRevD.108.016009
要旨(PRL): https://journals.aps.org/prd/abstract/10.1103/PhysRevD.108.016009
プレプリント(arXiv.org): https://arxiv.org/abs/2302.14676

問い合わせ先
QUP 戦略室
Email: qup_pr-at-kek.jp
* atを@に変えてください。

用語集
カシミール力:量子場は真空中においてゼロ点振動を持つため、近接した2つの物体間にわずかに力が働くことが知られておりカシミール力と呼ばれています。物体と物体の間がおよそ100万分の1メートル以下になると計測可能な大きさになります。

ワイルセミメタル:真空中では,右偏向の光と,左偏向の光は同じ性質を示しますが、ワイルセミメタルでは両者が異なる振る舞いを示します。

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