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2023.10.10
QUPのインターンシッププログラム(QUPIP)から暗黒物質の新しいアイデアが生まれる。
WPI-QUPは「人類に新たな目をもたらす」ための斬新なアイデアと、量子測定システムの開発を推進しています。そして、未知の量子場を探求し宇宙の秘密を解明するため、研究者間の交流においてさらなる一歩を踏み出しています。
今年度2023年の夏から始まったQUPのインターンシッププログラム(QUPIP)は、世界中の大学院生やポスドク研究員がQUPで最新の研究を行う機会を提供しています。衛星による宇宙背景放射の観測のための測定器や量子検出器の開発及びその理論的な側面など、実験に関連する研究ではその機会は広い領域に及んでいます。このプログラムには、既にハーバード大学、カリフォルニア大学バークレー校、ソウル大、東京大学など、欧州、アメリカ、アジアから、14の若手研究者参加者が参加しています。
写真:ソウル大学から参加したQUPIP第一期生のポスドク研究員、フィリップ・ルー博士
QUPIPとQUPの研究者の交流からは、既に研究成果も生まれてきています。ソウル大学からこのプログラムに参加したフィリップ・ルー博士は、QUPのシニア研究員のウォロディミル・タキストフ特任助教とともに、2023年9月11日、21日に2つの論文をArchiveに発表しました。これらの論文では、従来の見方とは異なる新しいアプローチで、未知の暗黒物質(ダークマター)の起源について議論されています。暗黒物質は全宇宙の物質の約85%を締めており、その正体を解明することはQUPの大きな目標です。
1つ目の論文では、暗黒物質が宇宙初期に非常に重い素粒子が崩壊してできた小さなブラックホールからのホーキング放射によって生成される可能性が議論されています。これにより、これまでに排除されていた質量領域に暗黒物質が存在する可能性が示唆されています。
2つ目の論文では、宇宙初期にできたブラックホールの蒸発から特別なニュートリノ(sterile neutrino)が生成され、通常のニュートリノと相互作用することにより、ニュートリノの質量と暗黒物質の起源が同時に説明される可能性が示唆されています。これらの研究にはJAXAのXRISM人工衛星での観測も含まれており、今後のQUPの重要な研究テーマとなります。
フィリップ・ルー博士は「QUPのインターンシップQUPIPは、外部の研究者とQUPの研究者が共同研究できる素晴らしい機会を与えてくれました」と、このプログラムの有効性を伝えています。QUPIPプログラムは、QUPの研究者と最先端のテーマに関連する研究を共同で行う機会となります。QUPでは現在もこのプログラムへの応募を受け付けており、これからも継続して参加者を募集していきます。
論文情報
Paper 1
プレプリント(arXiv.org): https://arxiv.org/abs/2309.05703
タイトル: Regurgitated Dark Matter
著者: TaeHun Kim (1,2), Philip Lu (2,3), Danny Marfatia (4), Volodymyr Takhistov (3,5,6)
所属:
1 School of Physics, KIAS, Seoul 02455, Korea
2 Center for Theoretical Physics, Department of Physics and Astronomy, Seoul National University, Seoul 08826, Korea
3 International Center for Quantum-field Measurement Systems for Studies of the Universe and Particles (QUP, WPI), High Energy Accelerator Research Organization (KEK), Oho 1-1, Tsukuba, Ibaraki 305-0801, Japan
4 Department of Physics and Astronomy, University of Hawaii at Manoa, Honolulu, HI 96822, USA
5 Theory Center, Institute of Particle and Nuclear Studies (IPNS), High Energy Accelerator Research Organization (KEK), Tsukuba 305-0801, Japan
6 Kavli Institute for the Physics and Mathematics of the Universe (WPI), UTIAS, The University of Tokyo, Kashiwa, Chiba 277-8583, Japan
Paper 2
プレプリント(arXiv.org): https://arxiv.org/abs/2309.12258
タイトル: Primordial Black Hole Neutrinogenesis of Sterile Neutrino Dark Matter
著者: Muping Chen (1), Graciela B. Gelmini (1), Philip Lu (2,3), Volodymyr Takhistov (3,4,5)
所属:
1 Department of Physics, University of California, Los Angeles, Los Angeles, CA 90095, USA
2 Center for Theoretical Physics, Department of Physics and Astronomy, Seoul National University, Seoul 08826, Korea
3 International Center for Quantum-field Measurement Systems for Studies of the Universe and Particles (QUP, WPI), High Energy Accelerator Research Organization (KEK), Oho 1-1, Tsukuba, Ibaraki 305-0801, Japan
4 Theory Center, Institute of Particle and Nuclear Studies (IPNS), High Energy Accelerator Research Organization (KEK), Tsukuba 305-0801, Japan
5 Kavli Institute for the Physics and Mathematics of the Universe (WPI), UTIAS, The University of Tokyo, Kashiwa, Chiba 277-8583, Japan
問い合わせ先
QUP 戦略室
Email: qup_pr-at-kek.jp
* atを@に変えてください。