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Press release

2025.6.19


新たな原子系「多価ミュオンイオン」の観測に成功
─TES検出器が捉えるエキゾチック原子の世界─

WPI-QUPの副拠点長である東俊行特任教授が主導する国際共同研究チームは、超伝導転移端センサーマイクロカロリメータ(TES)を駆使し、新たなエキゾチック原子系「多価ミュオンイオン」の観測に成功し、その論文がPhysical Review Letters誌に掲載されました。多価ミュオンイオンは、1つの原子核が少数の電子と負電荷を帯びた素粒子「負ミュオン」を同時に束縛した原子系です。これまで理論的には存在が予測されていましたが、実験的に直接観測されたのは今回が初めてです。

J-PARCの大強度ミュオンビームとTES検出器を組み合わせることで、低圧の気体原子を標的としたX線分光実験が実現し、電荷移行反応を抑制した条件下の測定が可能になりました。加えて、TES検出器の卓越したエネルギー分解能により、多価ミュオンイオンに束縛された電子の個数およびその量子状態までを識別して観測することに成功しました。

多価ミュオンイオンは、正電荷をもつ原子核が異種の負電荷をもつ粒子を同時に束縛するという、他に類のないユニークな系であり、新たな量子少数多体系としての関心に加え、負ミュオンと原子・分子の相互作用を探る新たなプローブとしての可能性も秘めています。

掲載誌:Physical Review Letters 134, 243001
タイトル: Few-electron highly charged muonic Ar atoms verified by electronic K x ray
著者: T. Okumura, T. Azuma, R. Hayakawa et al. (43 authors in total)
DOI: https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.134.243001

関連リンク
東京都立大学からのプレスリリース:
https://www.tmu.ac.jp/news/topics/37784.html
高エネルギー加速器研究機構(KEK)からのプレスリリース:
https://www.kek.jp/wp-content/uploads/2025/06/pr202506191400muar.pdf
KEK ニュース:
https://www.kek.jp/ja/press/202506191400muar

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