『The Astrophysical Journal Letters』に今月掲載された新たな研究では、暗黒物質から作られる宇宙初期の恒星——いわゆる「ダークスター」——がある場合に、それが起源となる微弱で持続的なニュートリノ信号を、既存の地上実験で検出できる可能性を示しました。この研究は、米国オレゴン大学の大学院生トーマス・シュヴェンベルガーと、高エネルギー加速器研究機構（KEK）の量子場計測システム国際拠点（WPI-QUP）の主任研究員ヴォロディミール・タキストフ特任准教授が共同で進めました。

ダークスターは、従来の核融合で光る最も古い恒星よりも宇宙の初期に形成された可能性のある仮説的な天体で、暗黒物質の消滅による加熱で光ります。ダークスターは、太陽の100万倍を超える巨大な質量に達した後、ブラックホールに崩壊し、現在銀河の中心で観測される超大質量ブラックホールのもととなった可能性もあります。この研究は、シュヴェンベルガー氏がQUPのインターンシッププログラム(QUPIP)を通じてQUPを訪問し、タキストフ氏と共同研究で開始されました。

ダークスターの検出は非常に困難です。しかし、この新たな研究では、これらの星内で暗黒物質の消滅によって生成される高エネルギーニュートリノの拡散流が、既存の地上ニュートリノ検出器で観測できる可能性を示しました。スーパーカミオカンデとアイスキューブ実験のデータ分析により、ダークスターの存在可能性とそれらを駆動する暗黒物質粒子の性質に対して、現在のニュートリノ観測データに基づく制約を導き出しました。「ダークスターからのニュートリノ信号は、特に興味深いものです。なぜなら、宇宙で起こった超大質量ブラックホールの形成と、地球上で観測されるニュートリノを結びつけるからです」とシュヴェンベルガー氏は述べています。

論文情報
Journal: The Astrophysical Journal Letters 989（2025）L44
Title: Diffuse Neutrino Signals from Dark Stars Seeding Super-Massive Black Holes
Authors: Thomas Schwemberger (1), Volodymyr Takhistov (2,3,4,5)
DOI: 10.3847/2041-8213/ade5a9
Preprint (arXiv.org): https://arxiv.org/abs/2412.18654


著者所属
1 Department of Physics and Institute for Fundamental Science, University of Oregon, Eugene, OR 97403, USA
2 International Center for Quantum-field Measurement Systems for Studies of the Universe and Particles (QUP, WPI), High Energy Accelerator Research Organization (KEK), Oho 1-1, Tsukuba, Ibaraki 305-0801, Japan
3 Theory Center, Institute of Particle and Nuclear Studies (IPNS), High Energy Accelerator Research Organization (KEK), Tsukuba 305-0801, Japan
4 Graduate University for Advanced Studies (SOKENDAI), 1-1 Oho, Tsukuba, Ibaraki 305-0801, Japan
5 Kavli Institute for the Physics and Mathematics of the Universe (WPI), UTIAS, The University of Tokyo, Kashiwa, Chiba 277-8583, Japan

問い合わせ先
QUP 戦略室
Email: qup_pr-at-kek.jp
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