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2026.2.6
超伝導TES検出器を用いた暗黒物質探索をQUPの理論と実験の研究者が共同提案しました
高エネルギー加速器研究機構に設立した、量子場計測システム国際拠点(WPI-QUP)の研究者らは、超伝導遷移端センサー(TES)を用いることで、これまで十分に探査されてこなかった軽い質量のダークマターを高感度で探査する手法を提案しました。
ダークマターは宇宙の全物質の約85%を占めると考えられていますが、その根本的な性質は未だ解明されていません。Physical Review D誌に掲載がされた本研究は、QUPのムピン・チェン研究員が、のヴォロディミル・タキストフ特任准教授、中山和則准教授、服部香里特任准教授ら3人のQUP主任研究員と協力して進めました。可視領域の精密光子検出用に、1電子ボルト(eV)よりはるかに良いSub-eVのエネルギー分解能を持つオプティカルTES検出器を服部主任研究員たちが開発していますが、それを使うことで、質量がGeV未満の軽いダークマターの探索をどれだけ拡張できるかを、ダークマターと物質の新たな相互作用の種別毎に体系的に示しました。図1にダークマターとの相互作用からTES検出器までの流れを示します。

図1:超伝導材料内でダークマターの物質の相互作用で励起された準粒子が、TES検出器で検出される仕組みの概念。
本研究は、現実的な検出器の応答モデリングと物質内における暗黒物質相互作用の詳細な理論計算を組み合わせています。検出器性能の詳細と素粒子物理モデルの両方をきちんと考慮することで、TES検出器を使ったダークマター探索感度を包括的に評価する枠組みを提供しています。ダークマターの探索は、他の量子センサーによる実験や宇宙観測をもとにした研究など、世界中でたくさんの戦略で進められています。図2は、この研究の代表的な結果で、ダークマターと検出器中の電子が衝突する場合のTES検出器での実験でどれだけの感度が出るかを示しています。この研究は QUPをはじめとする各機関における検出器開発の最近の進展を見据えて、こうした技術が将来の探索にどのように拡張できるかを示しています。

図2:ダークマターと電子の衝突事象をTESを用いた検出器で探索する際の到達感度。
赤の実線が今回の研究で示したもの。網掛けが他の実験でカバーされている領域で、
軽い質量のダークマターに対して感度が拡がることがわかる。
QUP研究者は国際協力のもと、様々な量子センサーの研究を進めています。 そして、それを使ったダークマター探索を神岡鉱山の中の地下の静かな環境に置くことで、より検出感度を高めようとしています。
「本研究は理論と実験の緊密な連携の重要性を示しています」とタキストフ主任研究員は強調します。「理論モデリングは、新しい検出器技術で開拓できる新粒子探索領域の特定の助けになり、それは暗黒物質探査と新たな素粒子物理学の確立という、国際的に進めている基礎科学研究の取り組みへ助けとなります。」
本研究は、新しい計測技術を通して基礎物理学の推進、ならびに分野間・理論と実験の境界領域における学際的で、国際的に注目される研究の進展というQUPの目的を端的に示した研究になりました。
論文情報
Journal: Physical Review D 113, 036006
Title: Light Dark Matter Detection with Sub-eV Transition-Edge Sensorsbr
Authors: Muping Chen (1), Volodymyr Takhistov (1,2,3,4), Kazunori Nakayama (5,1), Kaori Hattori (1)
DOI: https://doi.org/10.1103/74pr-jb4t
著者所属
1 International Center for Quantum-field Measurement Systems for Studies of the Universe and Particles (QUP, WPI), High Energy Accelerator Research Organization (KEK), Oho 1-1, Tsukuba, Ibaraki 305-0801, Japan
2 Theory Center, Institute of Particle and Nuclear Studies (IPNS), High Energy Accelerator Research Organization (KEK), Tsukuba 305-0801, Japan
3 Graduate University for Advanced Studies (SOKENDAI), 1-1 Oho, Tsukuba, Ibaraki 305-0801, Japan
4 Kavli Institute for the Physics and Mathematics of the Universe (WPI), UTIAS, The University of Tokyo, Kashiwa, Chiba 277-8583, Japan
5 Department of Physics, Tohoku University, Sendai, Miyagi 980-8578, Japan
問い合わせ先
QUP Strategy Office
Email: qup_pr-at-kek.jp
* atを@に変えてください。