セミナー 2012年

seminar2012

有限密度QCDにおけるランダム行列模型の応用と複素ランジュバンシュミュレーション

  • SPEAKER 佐野崇, 東京大学
  • PLACE Seminar room, Kennkyu honkan 3F
有限密度QCDの模型としてのカイラルランダム行列(ChRM)模型に対し、我々は二通りの応用を行った。
第一に、カイラル凝縮とダイクォーク凝縮を秩序変数としたChRM模型を構築し、有限温度密度相構造を研究した。QCD相互作用のもつ対称性から、クォーク・反クォーク、クォーク・クォーク相互作用の結合定数の比は一意に定まり、相構造も一意に得られる。3つのクォークフレーバの質量が同じ時には、低密度側でカイラル対称性の敗れた相(ChSB)が、高密度側でcolor-flavor locked(CFL) 相が基底状態として得られる。また、udクォークとsクォークの間に質量の非対称性がある(2+1フレーバ)場合には、udクォークによるダイクォーク凝縮のみの存在する2SC相が、ChSB相とCFL相との中間密度領域に現れる。
第二に、格子QCDシミュレーションの方法として提案されている、複素ランジュバン方程式を用いた方法を、ChRM模型を用いて試行した。複素ランジュバンシミュレーションは、有限密度QCDにおける符号問題を回避しうる方法として提案されているが、数学的基礎付けが不十分で、シミュレーションが正当化できるかどうか明らかではない。発表では、複素ランジュバンシミュレーションに対する現状の理解をまとめてレビューし、その後、ChRM模型の厳密解と数値解 を比較する。複素ランジュバンシミュレーションは、一部の領域で解析解を再現できないことが発見され、その理由を、符号問題とあわせて考察する。


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