seminar2012
Tuesday, June 5 2012, 11:00-12:00
3ループQCDポテンシャル等の数値的および解析的評価に用いるアルゴリズム
- SPEAKER
安齋千隼, 東北大
- PLACE
Meeting room 1, Kenkyu honkan 1F
摂動QCDにおける静的QCDポテンシャルの3ループ輻射補正を求めるための計算手法を説明する。QCDポテンシャルはQCDにおいて基本的な物理量の1つであり、重いqqbar束縛状態の質量などを初め、新しい物理への制限を与える多くの量の計算にも必要である。また、近距離でのポテンシャルの値が摂動的に高精度で求まれば、格子QCD等から得られるより遠距離での値との比較から、¥alpha_Sの値を高精度に決定することなども可能となる。しかし、これらに必要な計算量は膨大で、精度よく決定するためには新たな計算手法の開発が不可欠である。ここではそれらの一部を紹介する。
初めに、値に寄与する数万に及ぶ積分を、積分同士に成立する関係を用いて数十の積分(Master積分)に帰着するための方法を述べる。この部分は原理的には巨大な連立代数方程式を効率よく解くアルゴリズムである。従来PCクラスタ等が必要と考えられていた計算が通常のPCとMathematicaのコードを用いて現実的な時間で実行可能となっており、QCDポテンシャルの計算以外にも広い分野での応用が期待される。
次に、実際に得られた41個のMaster積分の解析的評価について説明する。各積分は運動量積分の後、最終的に¥Gamma関数及びその微分¥psi^(n)の積を含む多重無限和として表現できる。このうち、¥Gammaがcancelした場合の(¥psi^(n)の積および有理式を含む)一般的な無限和を解析的に評価するためのアルゴリズムを開発したので、それについて述べる。