seminar2013
Tuesday, December 17 2013, 15:00-16:00
コライダー実験における崩壊粒子の運動量エンタング ルメントを用いたベル不 等式検証
- SPEAKER
Shion Chen, University of Tokyo
- PLACE
Seminar Room, Kenkyu Honkan 3F
ベルの不等式は 2 粒子間の相関について、古典論が満たすべき上限を与える式である。量子論の下では、 エンタングル状態など特定の条件下で不等式が破れることが知られており、いわば古典論と量子論の判別式のようなものである。これまで既に多数の光学実験において破れが報告され、量子論の「勝利」はほぼ確定したが、フェルミオンや質量のある粒子系での実験例は依然として少ない。しかし量子力学の普遍性検証という観点において、また一般に重い粒子は古典性が強いという点で、これらの系での検証は非常に興味深い。また、未だよく理解されてない量子力学の非局所性などの性質を探る上でも重要である。
高エネルギーコライダー実験で生成される不安定粒子は、その崩壊で様々なエンタングル状態を生じるため、これらの検証手段として有望である。 我々は今回チャーモニウム崩壊J/ψ, ηc, χc0→ΛΛ→pπpπに主に着目した。チャーモニウムから崩壊したΛΛのペアはヘリシティー・エンタングル状態を形成する。ΛΛ対は続けて弱崩壊Λ→pπ-, Λbar→pbar π+を行うが、この崩壊では崩壊角分布が親粒子の偏極の方向と相関を持つ。従って終状態のπ+π-は親粒子の性質を引き継いで互いの運動量がエンタングルし、量子論では2つπの方向が古典論の予言を超えた大きな相関を予想する。この性質を用いたベル不等式および量子力学の検証は1980年代に提案されたが、BES実験などのチャームファクトリーの登場により近年になって理論・実験双方からのアプローチが盛んになってきた。今回講演ではこれらに関する近年のアクティビティや、我々が行った新しいベルの不等式検証の定式化および実験可能性について論ずる。さらに同様の崩壊構造を持つZ→ττ→πνπν、H→τ
τ→πνπνに関しても検討し、超高エネルギー実験における量子力学基礎実験のポテンシャルについても考えてみようと思う。(これはHiggs bosonを応用する初の試みである!)