Picard-Lefschetz理論の量子系への応用が最近見いだされ、特に符号問題に対する新しいアプローチとしても注目を集めている。符号問題は大まかに言えば振動積分の評価の難しさに起因しており、とくにモンテカルロ法のimportance samplingが破綻してしまう、という内容が lattice field theory の文脈で有名であるが、平均場近似にもこの病的な振る舞いが引き継がれてしまうことが知られている。
本セミナーでは、Picard-Lefschetz理論の基礎的な内容を説明し、これがなぜ符号問題に有用だと考えられているのかについて述べる。その後このアイディアを応用して、簡単な行列模型の相転移現象を調べることで、Lee-Yangの定理とこの手法の関係について説明する。また、最近この手法を用いれば平均場近似に引き継がれた符号問題が回避されることを発見したため、その進展についても発表したい。