セミナー 2018年

seminar2018

[第五回KEK連携コロキウム] ベレジンスキー・コステリッツ・サウレス転移とハルデン現象 2016年ノーベル物理学賞の奇妙な背景             

  • SPEAKER 押川正毅, 東京大学 
  • PLACE つくばキャンパス研究本館小林ホール/東海キャンパス東海1号館324室 (TV会議中継)    
2016年のノーベル物理学賞は、「トポロジカル相転移と物質のトポロジカル相の理論的発見」に対して、サウレス、コステリッツ、ハルデンの三氏に授与された。     
ハルデン氏の主要な受賞業績は、量子反強磁性スピン鎖の定性的な性質はスピン量子数が半奇数か整数かによって全く異なり、 整数スピンの場合には励起ギャップ(「ハルデンギャップ」)を持つという予言である。ほとんどの教科書や解説では、ハルデン氏のこの理論的発見は、素粒子論から「輸入」された有効的な場の理論である非線形シグマ模型が持つトポロジカル項に基づいたものとされてきた。
しかし、ハルデン氏本人の回顧や、失われていた「幻の論文」の発見によって、ハルデン氏による当初の発見の経緯はそれとは大きく異なり、同時にノーベル物理学賞の授賞対象となったベレジンスキー・コステリッツ・サウレス(BKT)転移の理論と密接に関係していたことが明らかになった。 
本講演では、おそらく当時としてはあまりに斬新すぎたために奇妙な運命をたどったハルデンギャップの発見の経緯とともに、その物理的内容をなるべくわかりやすく解説したい。また、ハルデンギャップの発見がその後の物理学の発展に与えた影響についても議論したい。 


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