セミナー 2019年

seminar2019

[11th KEK joint colloquium] 仮想と実在をつなぐバルクエッジ対応

  • SPEAKER 初貝安弘氏, 筑波大学 
  • PLACE Seminar hall 4 go-kan / Room 324 1 go-kan Tokai campus(TV link)
2016年度のノーベル物理学賞の対象となり、近年多くの興味を集めているトポロジカル相はその名の通りトポロジカルな量で相が特定されることを最大の特徴とする。しかし実は多くの場合、そのトポロジカルな量は実験では直接観測できない。つまり、見えない! 実際に観測されるのは表面状態などのいわゆるエッジ状態(局在状態)であり、境界を見てバルクを想像するのである。トポロジカル絶縁体の角度分解光電子分光(ARPES)実験で観測する表面状態がその典型例である。
このバルクのトポロジカル量とエッジ状態との関係は「バルクエッジ対応」と呼ばれ、量子ホール効果での発見以来多くの量子系で確認されてきたが、誘電体中の古典電磁場であるフォトニック結晶でもバルクエッジ対応に従う局在状態が観測されたことはある種の驚きであった。しかし、振り返ればバルクのトポロジカル量はいわば仮想的存在であり、実在するのはエッジ状態であると考えれば、これは今日、必然とも言える。
非自明なエッジ状態(局在状態)の起源はバルクの固有モードの準位交差(ディラックフェルミオン)とその破れ(質量)であり、古典系であっても、エッジ状態が現れるバルクギャップ以下のモードで定義される仮想的な(非可換)ベリー接続が定めるトポロジカル数は観測されるエッジ状態を予言する。
この発想は、近年、広く適用され量子系はもとより多様な古典系、古典電磁場、古典力学系や電気回路、さらに気象現象にまで適用されている。仮想と実在とに橋を架けるバルクエッジ対応は至るところにある。講演では概念の紹介からはじめて多様な例を紹介したい。                    


ページ先頭へ戻る