セミナー 2020年

seminar2020

[KEK連携コロキウム] 磁石への微視的モデルからのアプローチ −有限温度での保磁力解析−

  • SPEAKER 宮下精二, 日本物理学会, 東大物性研
  • PLACE Online (Zoom)
磁石、つまり永久磁石は身近な物質であり、モーターや記録媒体などの多くの機器で重要な役割を果たしている。その機構解明、高性能化に向けて盛んに研究が進められている。特にその温度依存性の解明は重要課題になっている。しかし、そこには現在の物理学の方法では取り扱いが困難な多くの興味深い問題を含まれている。この問題への我々の試みを紹介する。ここでは、現在最強の磁石であるNd2Fe14Bを取り上げる。磁石の重要な性質である有限温度での保磁力は、通常の熱力学諸量とはちがい、理論的な定式化がない。この問題は準安定状態の緩和の問題であり、その崩壊はいわゆるスピノーダル過程とみなされるが、短距離力相互作用系では核生成過程のため、真の意味での特異性を持たない。そのため、見かけ上のスピノーダル過程を定式化しなくてはならないという困難な問題がある。この問題に対し、有限温度LLG方程式の方法や、Wang-Landau法を用いたモンテカルロ法によって、ナノサイズ粒子での保磁力の温度依存性を定量的に評価した。さらに、双極子相互作用のため多磁区構造が現れる大きなグレインでの保磁力機構についても解析した。最後に、磁石は、グレインの集合体であり、その集団としての保磁力機構の解析の試みについても触れたい。


ページ先頭へ戻る