⾼エネルギー加速器施設の放射線安全管理のためには、ビーム損失点付近で⽣成される中性子エネルギー分布のデータが必須となります。しかしながら、⾼エネルギー領域に対しては、実験が困難で実験値も存在しないため、これにできるだけ近いエネルギー領域の加速粒⼦ビームを⽤いて実験値を蓄積して⾏く必要があります。これに資する実験データ収集を⽬的として、欧州原⼦核研究機構(CERN)の⾼エネルギー加速器混合粒⼦場(CHARM)施設において、遮蔽透過後の高エネルギー中性子のエネルギー分布測定を行っております。この施設では、加速器からの24 GeV/cの陽子ビームを照射室内の銅ターゲットに照射し、広範囲なエネルギーの中性子場を生成することが出来ます。

図1にCHARM施設のビームラインの断面図を示します。ターゲットの上部は大理石、鋼板があり、その上は箔放射化実験用ブロック、透過実験用ブロック、その隣は試験照射場ブロックになっています。室上部のコンクリート遮蔽は一部取り外すことができ、ここに様々な物質をおいて、透過後の中性子エネルギー分布を測定することが出来ます。遮蔽として用いた物質は普通コンクリート、鉄、ボロン含有コンクリート(コレマナイトコンクリート)であります。

図1.CHARMビームラインの断面図

図2に液体シンチレーション中性子検出器を用いた高エネルギー中性子の測定結果の例を示します。この結果より、中性子のエネルギー分布は100 MeVを超える成分を有し、透過する物質により異なるエネルギー分布を示すことが分かります。このことから、様々な遮蔽条件において、異なる中性子のエネルギー分布や強度を、ボナーボール型中性子検出器、箔放射化法などの複数の計測手法で実験的に取得し、相互比較を行うことが出来ます。

図2.遮蔽の物質ごとにより得られた中性子エネルギー分布の違いの例

本研究で行なう遮蔽透過後の中性⼦エネルギー分布や強度の測定データは、今後さらなるビームの大強度化を目指す大強度陽子加速器であるJ-PARC (Japan Proton Accelerator Research Complex)などの加速器施設の放射線安全管理に役立ちます。

メンバー

  • 李 恩智