about compact ERL

ERL is a unique machine and bring you to bright future

お知らせ1:cERL見学をご希望の方は下記「お問い合わせ」よりご連絡下さい

お知らせ2:YouTube動画をご利用になれます

  • コンパクトERL概要(KEK一般公開より)
  • コンパクトERL加速器(KEK一般公開より)
  • 半導体の最先端技術を日本で(KEK一般公開より)
  • お知らせ3:コンパクトERLの紹介パンフレットはこちらよりご利用ください

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    超伝導加速空洞とは

    ビームを加速するためには高周波を加速空洞にためる必要があり、従来の加速空洞は熱伝導率の高い銅金属で製作されています。しかし高い加速勾配を目指すと、空洞が発熱してしまうため、繰り返しの低いビーム運転しか行うことができません。そこで、連続(continuous wave:CW)でビーム運転が可能となるように空洞の発熱がない超伝導加速空洞が開発されました。超伝導体のニオブ(Nb)で製作された加速空洞は、摂氏-271度(2K)の液体ヘリウムで冷却されます。コンパクトERLではCWで超伝導加速空洞を運転しており、高い平均電流のビームを加速することができます。KEKB加速器や国際リニアコライダー計画など多くの国内外のプロジェクトと協力関係の下で、超伝導加速器の開発や運転を行っています。

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    エネルギー回収型線形加速器(ERL)とは

    一度の通過でビームを高いエネルギーに加速する装置を線形加速器と呼びます。通常の線形加速器では、ビームを使い捨ててしまうか、蓄積リング型加速器に入射する目的で使用するため、高い平均電流の運転を想定していません。従来の常伝導金属(銅)を用いた加速空洞では、高い平均強度(パワー)を出すことができません。エネルギー回収型線形加速器(Energy Recovery Linac:ERL)では、加速して実験に使用したビームを線形加速器に戻して、エネルギーを回収します。回収されたエネルギーは次の新しいビームを加速するために使用されるため、高い平均電流で運転することが可能になります。特に超伝導加速空洞による空洞表面損失の大幅な低減により、エネルギーを100%回収することが可能で、高い平均電流で高繰り返しの運転を実現することができます。またエネルギーを回収し再利用することで消費電力を大幅に削減することが可能となり、地球環境にも優しい次世代加速器となっています。

    ERLと自由電子レーザー(Free Electron Laser:FEL)を組み合わせると、これまでにない強力な光源となります。FELとは電子からエネルギーを引き出し、ある特定の波長の光に変換する装置で、その変換効率は高い時は数%になります。FEL発振のためには小さなエミッタンス、小さなエネルギー拡がりや短いバンチ長の電子バンチが必要となりますが、FEL発振した後の電子は大きく攪乱され、電子バンチのエネルギー拡がりやエミッタンスが増大します。そのような電子は輸送し続けることが困難になりますが、ERLでは加速空洞でエネルギーを回収し、新しいビームを加速するために使用します。この原理によって、高い平均電流・高い繰り返しのビームでFEL発振し続けることが可能となります。

    そのためには、連続して運転可能な超伝導加速空洞や大電流の高輝度電子銃が必要となります。コンパクトERLではエネルギー回収の実証をするほか、加速空洞や電子銃の開発を進めています。また、このような良質の電子ビームを照射実験にも利用しています。また、高い平均電流で運転するため、少ないビームロスで輸送するためのビーム調整が重要となっています。

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    自由電子レーザー(FEL)とは

    電子ビームからより強い光を取り出すために研究が進んできました。電子ビームは曲げられたときに放射光を出す性質があり、より単色で高輝度の光を得るために電子を蛇行させるアンジュレータが開発されました。自由電子レーザー(Free Electron Laser:FEL)とは、アンジュレータ内で発生した光(電磁波)を電子と相互作用させることによって、さらに強度が強くコヒーレントな光源に発展させたものです。多くのFELはミラーで光を閉じ込める光共振器型を採用していますが、極端紫外光(Extreme Ultraviolet:EUV)やX線の短い波長では高反射率のミラーが存在しないため、自己増幅型(Self-Amplified Spontaneous Emission:SASE)と呼ばれる方式で発振させて光を出しています。代表的な自己増幅型のFELには、ドイツの欧州X線自由電子レーザー施設、国内ではSPring-8と同じ敷地にあるSACLAがあります。

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    コンパクトERL

    コンパクトERL(compact ERL:cERL)は2013年から運転を開始し、現在は超伝導加速空洞の産業応用利用を念頭に置いたハードウェアの開発やビームコミッショニングを行っています。500kVのDC電子銃により生成された高輝度大電流電子ビームを超伝導加速空洞で10-20MeVまで加速します。加速したビームはおよそ100mの周回輸送路を通過して超伝導加速空洞に戻り、エネルギーが回収されます。回収されたエネルギーは新しい電子ビームに加速に再利用できることが大きな特徴となります。2014年に初めてエネルギー回収が実証され、2016年には1mAの大電流CW運転でほぼ100%のエネルギー回収に成功しました。

    2020年には、NEDO事業「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発」の下で周回輸送路に2台のアンジュレータが設置され、自己増幅型の自由電子レーザーの実証を行いました。ビーム調整には機械学習を導入し、産業総合研究所の協力のもと、設計通りの波長の赤外光を観測しました。

    一方で、2019年には加速ビームを照射実験に利用するためのビームラインと照射装置を建設しました。照射装置は強固に遮蔽体で覆われており、最大26MeVの電子ビームを電流10μA打ち込むことが可能です。これまでに、核医学用検査薬の99Mo生成や、アスファルト長寿命化の基礎研究、ナノセルロース生成のための木材電子照射などを行っています。

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    パラメータ / 運転モード 周回モード 照射モード
    入射エネルギー 3~5 MeV 3~5 MeV
    周回エネルギー ~20 MeV (CW運転) 3.5~19 MeV (CW運転)
    ~23 MeV (パルス運転)
    規格化エミッタンス 0.15 mm mrad (低電荷)
    ~5 mm mrad (高電荷・バンチ圧縮)
    バンチ長 2~3 ps (通常運転) 2~3 ps (通常運転)
    バンチ長 < 1 ps (バンチ圧縮)
    平均電流 最大1 mA 最大10 μA


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