機械工学センターの役割
機械工学センターは機構内外の研究者やプロジェクトからの要請を受けて、製造支援（依頼業務）や エンジニアリング支援（研究開発業務）をおこなっています。 製造支援では研究で使用される実験機器などに使用される特殊な材料や高精度を必要とする部品を マシニングセンターや旋盤、放電加工機などを駆使して製作をおこなっています。 また、溶接やロウ付けなどの組立て作業や三次元測定器や形状測定器などによる実験機器等の測定をおこなっています。 エンジニアリング支援では、機構の研究所や施設と一体となって、装置・設備の設計や製作など機械工学の分野を 担当しています。例えば、液圧成型による超伝導空洞の製作方法や超精密加工を用いた高精度な加速管の製作など、 開発要素が高く製作が困難な加工方法などの開発をおこなっています。 機械工学センターに所属する職員は２０名で技術職員は１２名です。
フラックスコンセントレーターの加工
SuperKEKBで使用される新たな陽電子の収束系としてフラックスコンセントレータが採用され、これに用いられるフラックスコンセントレータヘッドの加工をエンジニアリング支援として対応しました。フラックスコンセントレータヘッドには0.2mm幅のスリット加工を螺旋状に行う必要があり、既存のワイヤー放電加工機ではスリットを螺旋状に加工することができません。そのためワイヤー電極をクランクさせる装置を開発し、ワイヤー放電加工機の能力を最大限に引き出し、安価で高精度な加工を行なうことに成功しました。8年目の若手職員が担当し、平成28年度KEK技術賞を受賞しました。
Polar Bear2用ミラーの加工
Polar Bear2の実験に使われる楕円曲面のミラーをマシニングセンタで製作しました。幅680mmの正八角形で、材料はアルミニウムです。裏面は軽量化のための穴あけが126か所あり、約12.4kg軽くする事ができました。ミラー面の加工は10度傾けて行い、仕上げ加工の際は面粗度向上のために特殊なコーティングのエンドミルを使用しました。5年目の職員が担当しました。
Belle ⅡVTX用シールド部の製作
BelleⅡ測定器内部で使用するシールド部品を製作しました。測定器中央部にある検出器の接続ケーブル部分を遮蔽する為の部品で、放射線遮蔽性能の高いヘビイメタルという材料を使用しています。ヘビイメタルはタングステンベースの材料であり加工が難しい為、特殊なネジ切り工具・専用治具・5軸加工機を駆使して加工を行い、2種類×各8個の部品を製作しました。2年目の職員が担当しました。
9セルクーポン空洞のチタン支柱部品製作
加速器のビームを加速するためにはマイクロ波を投入した空洞が必要であり、空洞の内面は滑らかな状態が求められます。その手法として、電解研磨技術が用いられますが、最適な研磨条件を探す必要があります。
機械工学センターではその研磨表面を観察するためのNb試験片を取り付けたクーポン空洞の製作を行いました。それに取り付けるチタンのサポート脚をCAD/CAM、３軸マシニングセンタにより空洞の外側曲面にフィットするように加工し、そのあとEBW（電子ビーム溶接）により接合します。赤道部3か所、アイリス部6か所、センターセル、エンドセルで形状に違いがあるため、12種類のプログラムで9セット36本のサポート脚を加工しました。1年目の職員が担当しました。
新規採用の技術職員の業務内容
新規採用で着任された方は、まず依頼業務の部品製作を担当し、様々な加工機の加工技術を習得して
困難な加工に対応できる技術力を身につけていただきます。また、3DCADや設計技術も習得して製作全般に
関する加工技術を身に付けたのちにエンジニアリング支援の開発業務も担当していただきます。
写真は3年目の技術職員がSuper KEKBで使用される磁場測定用のヘリウム容器のフランジを加工している
ところです。ステンレス製の直径が940mmの大変重いものを、真空漏れを起こさないように変形を抑えることや、
シール面を1/1000mm以下の表面粗さにする高度な加工が必要となります。今までに習得してきた技術を生かし、
最適な加工方法や加工条件を選定し要求を満たす加工を達成しました。これ以外にも、マシニングセンターで
加工した大型のアルミミラーや、アルミのTig溶接による真空容器の製作など、実験機器の製作に必要な特殊な
加工方法を習得しております。
最先端の研究に使用される実験機器を是非一緒に製作してみませんか？
機械工学センターHP
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