© Rey.Hori
KEK では、次世代の直線衝突型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の実現に必須となる、超伝導加速システムの確立・工業化や超高品質ビームの生成・制御技術の確立を目指し、ILC加速器に関連した技術開発を推進するための施設として、 STF(超伝導リニアック試験施設)、ATF(先端加速器試験施設)、CFF(空洞製造技術開発施設)を利用して研究開発を進めています。
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KEK では、次世代の直線衝突型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の実現に必須となる、超伝導加速システムの確立・工業化や超高品質ビームの生成・制御技術の確立を目指し、ILC加速器に関連した技術開発を推進するための施設として、 STF(超伝導リニアック試験施設)、ATF(先端加速器試験施設)、CFF(空洞製造技術開発施設)を利用して研究開発を進めています。
次世代加速器構想である国際リニアコライダー( ILC)の実現には、「極小」で「平行度の高い」ビームの生成が必須です。KEKでは、その実現をを目指して高品質なビームの生成と制御の研究開発が進められています。
ILC は加速した電子ビームと陽電子ビームを正面衝突させる衝突型加速器です。加速される「ビーム」は非常に薄いリボンのような形で、200 億個の電子や陽電子から形作られています。ビームのサイズを小さくすれば、ビームの中の電子や陽電子の密度が高くなり、電子と陽電子の衝突の頻度が上がるため、次世代加速器ではビームのサイズは、ビームとビームの衝突点付近で、高さ5 ナノメートル(ナノメートル= 100 万分の1mm)幅300 ナノメートルという極小サイズが要求されています。
このような非常に小さなビームを作るためには、磁場の強度分布の変化が急でしかも精密に制御された「高精度高勾配収束電磁石システム」と、粒子の方向がよく揃った「超平行ビーム」を実現しなければなりません。また、小さなビームを正確に衝突させるには、衝突位置のズレをナノメートル精度に制御する技術も不可欠です。
KEKの試験加速器「先端加速器試験施設(ATF)」はILCの電子側直線加速器の入射加速器と同じ構成となっており、電子銃部、直線型電子加速器、粒子の平行度を高めるダンピングリング(円形加速器)、ビーム取り出し計測ライン、電磁石でビームを極小に絞り込む最終収束ビームライン(ATF2)から構成されています。ダンピングリングでは、従来の加速に比較して約100倍も平行度の高い「超平行ビーム」をつくることができます。この種の試験加速器は世界でもATFのみであり、世界中から研究者が集まり、研究開発が進められています。
国際リニアコライダー(ILC)等の次世代の加速器実現に向けて重要な役割を担う、高性能の超伝導空洞開発と、超伝導加速システムの試験開発を行っています。
「超伝導加速」は、ニオブ等の超伝導体で作った加速空洞を極低温まで冷却し、超伝導状態にして粒子ビームを加速する方式のことです。次世代加速器の加速方式として、世界で研究開発が進められています。
超伝導加速の最大の特徴は、その加速効率の高さです。超伝導素材でつくられた空洞にマイクロ波を送り込んで電場をつくり、電子や陽電子のビームを加速します。-271度Cまで冷却されたニオブ製の空洞の内表面は超伝導状態になり、電気抵抗が生じません。そのため、電力損失や加熱が起こらず、空洞の中にマイクロ波のエネルギーを、きわめて効率よく溜め込むことができるのです。
小さな電力で高電界を発生することができるので、短い距離で大きなエネルギーを粒子に与えることができます。つまり、同じエネルギーを実現するための加速器の長さを抑えることが出来るとうことで、これは加速器の小型化につながります。また、空洞の発熱を抑えることができるため、過熱対策用の冷凍機コストを抑えることも可能になります。
加速器の技術は現在、ガンの診断や治療などの医療分野や、素材の改良、精密か構などの工業分野など多岐にわたって活用されています。超伝導技術で加速器が小型化されれば、よりコンパクトで省エネルギー、かつ安価な装置を実現でき、様々な応用分野でより広い選択肢と機会を提供することができるようになります。
空洞製造技術開発施設(Cavity Fabrication Facility: CFF)では、ILC 計画に向けて超伝導加速空洞の製造技術の研究開発を推進するために、機械工学センターの既存の工作機械と合わせて、KEK 所内にて超伝導加速空洞を内製しています。