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T2K実験、反ミュー型ニュートリノを使ったニュートリノ消失モードの最初の結果
2015年6月20日
2015年5月18日(月)、物理セミナーで「T2K実験グループによる反ミュー型ニュートリノを使ったニュートリノ消失モードの最初の測定結果」と題し、インペリアル大学ロンドン校のアッシャー・カボス(Asher C. Kaboth)博士が講演を行いました。 今回の講演では、2014年5月から2015年3月までに取得した2.315 × 1020 POT(Protons On Targetの略;データ量を表す指標)のデータを使った反ミュー型ニュートリノ振動の振動パラメーターの最新結果と、これまでのニュートリノ振動の結果との比較について報告しました。
2012年、T2K実験グループは加速器で作ったミュー型ニュートリノが電子型ニュートリノに変化するニュートリノ振動現象を世界で初めて測定しました。 この発見により3種類のニュートリノの間でニュートリノ振動が起きていることが実証され、ニュートリノ振動現象の全容の解明に大きな進歩をもたらしました。 2013年からは、ミュー型ニュートリノの反粒子である「反ミュー型ニュートリノ」を使って同様の実験を行い、ニュートリノのCP対称性の研究を世界に先駆けて進めてきました。
生成したミュー型ニュートリノが電子型ニュートリノへと変化する確率は非常に小さく、大部分はタウ型ニュートリノへと変化します。 T2K実験で生成したタウ型ニュートリノはエネルギーが足りないため、物質と反応してタウ粒子を生成することができません。 そのため、この過程を「ミュー型ニュートリノ消失モード」と呼んでいます。 消失モードの測定により、ニュートリノの種類と質量の混合割合をあらわす sin2(θ23)と質量二乗差Δm232を測定することができます。
今回、反ミュー型ニュートリノを用いてsin2(θ23)、Δm232の測定が行われました。もし測定結果がミュー型ニュートリノによる測定結果と異なる場合は、既存の理論では理解できない大発見となります。 得られた振動パラメーターのsin2(θ23)= 0.515 +0.085-0.095とΔm232 = 2.33 +0.27-0.23 × 10-3 eV2 は、2013年に発表したT2K実験によるミュー型ニュートリノ消失モードの結果と一致しており、また、米国のMINOS実験による反ミュー型ニュートリノ消失モードの結果とも一致しています。
今回の結果からはニュートリノと反ニュートリノの違いを確かめることができませんでしたが、より精密な測定結果を得るためT2K実験グループは現在もデータ取得を行っています。今後の、より大統計のデータ解析から得られるT2K実験グループの測定結果に期待しましょう。