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高校生のための素粒子サイエンスキャンプ Belle Plus 2022 開催
2022年9月16日
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集合写真。全国各地から高校生23名が参加しました。
2022年8月2日〜5日の日程で、高校生のための素粒子サイエンスキャンプ「Belle Plus(ベルプリュス)2022」がつくばキャンパスで開催されました。Belle Plusとは、KEKつくばのKEKB加速器を用いたBelle実験で実際に行われてきた、最先端の研究活動を高校生の皆さんに体験してもらうことを目的としたサイエンスキャンプです。Belle実験は、小林誠・益川敏英両博士の2008年のノーベル物理学賞受賞に貢献しており、現在はBelle実験のデータ解析も行いつつ、KEKB加速器とBelle実験をアップグレードしたBelle II実験が行われています。
Belle PlusはKEKと奈良教育大学の共催により2006年度から実施していますが、新型コロナウィルスの影響により、昨年と一昨年度はオンライン形式での開催となりました。16回目の開催となる今回は、3年ぶりに対面で実施されました。
Belle Plusでは現役のBelle/Belle II実験グループの研究者による講義や施設見学に加え、4つのコースに分かれた実習が行われました。それぞれのコースはBelle/Belle IIの実験データの中から粒子を探索する「B-Lab」班、宇宙線(ミュー粒子)の速度を測定する「宇宙線速度測定」班、自作したワイヤーチェンバーという粒子検出器を用いて宇宙線の降り注ぐ角度を測定する「ワイヤーチェンバー」班、Belle実験で観測可能な現象を理論的に研究する「理論」班です。
今年は秋田、茨城、奈良、沖縄など15の都府県から23名の高校生が集まりました。実習の時間には参加者は皆熱心に手を動かし、活発に仲間や講師と議論を交わしていました。最終日の発表会では、各グループともこれまでの研究成果を発表し、質疑応答の際には時間いっぱいまで質問が途絶えないほど積極的な議論が交わされました。
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Belle II測定器見学の様子。参加者一同は、この他にも加速器施設などKEKの最先端の装置を見学して回りました。
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B-Lab班と理論班は協力しながら研究を進めました。B -Lab班のデータ解析結果と、理論班がファインマン図を作成して予想・検証した粒子の崩壊過程を比較し、相互に考察しました。
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ワイヤーチェンバーを組み立てる様子。ワイヤーチェンバーの製作を通して、その特性を理解しました。そして、自作したワイヤーチェンバーを用いて宇宙線の角度分布を測定しました。
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宇宙線速度測定班の研究発表の様子。シンチレータと呼ばれる電荷を持った粒子の検出に用いられる物質を2つ用いて、ミュー粒子の速度を測定しました。発表では、測定結果に含まれる誤差も検討していました。
この他、クイズを交えたサイエンスカフェや高校教員による実験実習が行われました。また、Belle Plus卒業生との交流会では、Belle Plus OG 2名が大学進学の経験談や研究紹介を行い、参加者は興味津々の様子で耳を傾けていました。
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Belle Plus卒業生との交流会の様子。2006年度のBelle Plus参加者で現在、大学院生のBelle Plus OGが滞在先の欧州原子核研究機構(CERN)からZoomで参加し、研究紹介や進路選択についてアドバイスしました。
参加者は「今までは、電子や素粒子というと遠い存在のように思っていたが、宇宙線を観測したことでとても身近な存在だと思うようになった」
「今までは実験は決められた手順通りするものだったが、自分達で適切な方法や誤差を検討しないといけないということを知って、研究への理解が深まった」
「今まで周りに科学の話をする人がいなかったから誰とも楽しさを共有できていなかったが、この4日間心ゆくまで科学について語り合うことができて最高に楽しかった」などと4日間を振り返っていました。
※高エネルギー加速器研究機構と奈良教育大学は、教育及び研究成果の社会還元の推進を目的として連携協定を締結し、Belle Plusを実施しています。