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ATLAS実験日本グループの高輝度LHC向けアップグレードで素核研の3名がOutstanding Achievement Award受賞

6月20日、 ATLAS実験のコラボレーション全体会議(開催地:ギリシア・テッサロニキ)にて、第7回Outstanding Achievement Awardの受賞式が行われました。この賞は、2年に1度、ALTAS実験の全分野における優れた技術成果を表彰するもので、技術調整、検出器システムのほか、アップグレード、複合パフォーマンス、アウトリーチなどの活動分野など、コラボレーション全体から推薦されます。
今回、ATLAS実験日本グループの高輝度LHC実験に向けたシリコン検出器アップグレードへの特筆すべき貢献が評価され、素核研エネルギーフロンティアグループの中村 浩二(なかむら こうじ)助教、生出 秀行(おいで ひでゆき)准教授、外川 学(とがわ まなぶ)准教授の3名が受賞しました。

 

ATLAS実験では、陽子・陽子衝突頻度を大幅に高める高輝度LHC(世界最大ハドロン衝突型加速器)実験に向け、内部飛跡検出器の総入れ替えを行うため、「ITk(Inner Trackerの略)」と呼ばれる測定器の設計を終え、これから量産工程に入ります。この測定器のうち、より内層のピクセル検出器を建設するプロジェクトにおいて、3名は、過酷な放射線環境下での長期間の運用に耐える、放射線耐性に優れたピクセルセンサーの開発、センサーとは別工程で作られた読み出しフロントエンドIC(センサーから出力されたアナログ信号をデジタル処理し、デバイスと結ぶ集積回路)とセンサーを、ピクセル毎に電気的に接合する「ハイブリッド化された回路」の安定製造、さらに通信・給電のためのフレキシブル基板を実装した「ピクセルモジュール」の組み立てとその量産・検査態勢の国内整備などを進めてきました。このITk Pixelプロジェクトには、ATLAS実験日本グループから約50名の研究者・大学院学生が関わっています。

今回の受賞を受けて、生出准教授は以下のようにコメントしました。

「ITkを投入することで、従来よりも5倍以上良い『視力』で電荷を持った粒子の飛跡の位置を正確に測ることができるようになります。これにより、陽子ビーム同士が交差するたびに平均200もの陽子・陽子衝突の発生を想定する高輝度LHCの過酷な環境下でも、ヒッグス粒子生成のような希少かつ興味のある衝突イベントの詳細を知ることができ、ヒッグス粒子の性質決定の精密化や、従来は生成・探索の難しかった新粒子を探せることが期待されています。ITkを建設するために、今までにない規模の1万枚程度のピクセルモジュールを世界全体で協力して作っていく態勢が不可欠です。日本グループがピクセル検出器の本格量産を行うのは今回が初めてですが、それにもかかわらずATLAS実験全体に認められるような生産・検査態勢を敷くことができたのは、測定器を過酷な環境で使用するための挑戦的な条件や開発課題に対しても真摯(しんし)に向き合ってくださった企業の皆さまのご協力に負うところも大きいです。量産は今年度から本格化していきますが、測定器の完成に向けて一層気を引き締めて進めていきたいと思います。」

 


 

ALTAS実験とは

ヨーロッパのスイス・ジュネーブ近郊にあるCERNで行われている国際共同実験で、世界各国から約3,000人の研究者が参加しています。周長27キロメートルのLHC加速器と、直径約25メートル、長さ約45メートルの巨大なATLAS検出器を使って、素粒子の質量の起源に深く関わるヒッグス粒子の性質の解明や、新しい物理法則に関わる未知の素粒子の探索といった研究をしています。13の大学・研究機関からなるATLAS日本グループは、陽子・陽子衝突頻度を大きく高める高輝度LHC実験に向けて、内部飛跡検出器やミューオントリガー検出器回路の刷新を主導しています。

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