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【ようこそ素核研へ】Belleグループ LAU Tak Shunさん着任インタビュー

2024年6月に、Belleグループに、LAU Tak Shunさんが特任助教として着任しました。

素粒子物理学の世界に興味を持ったきっかけ、どのような研究をしてきたのか、また研究や作業などで行き詰った時の気分転換の方法などをお聞きしました。

■素粒子物理学の世界に興味を持ったきっかけは?

子供の頃、夏になるとエアコンが効いている公共図書館に行くのが大好きでした。その中でも、宇宙を美しい写真で描いた本に魅了されました。それ以来、私は科学、特に「なぜ」や「どのようにして」私たちの宇宙が成り立っているのかという問いに惹かれるようになり、高校では自然に科学科目を選択しました。ある日、試験の後、物理の先生が私たちに思いがけないプレゼントを用意してくれていました。それは授業ではなく、映画鑑賞でした。映画はブライアン・グリーンのドキュメンタリー『エレガント・ユニバース』でした。その時に、ドキュメンタリーの中で投げかけられた問いに自分も挑みたいと思い、素粒子物理学者になることを決めました。

■KEKに来る前はどこでどのような研究をしていましたか?

素粒子物理学でのエキサイティングな流れに加わるため、2014年に私はまずCERNでATLAS実験グループの一員としてヒッグス粒子が4つのレプトンに崩壊するデータを解析しました。ヒッグス粒子の質量やスピンに焦点を当てるのではなく、有効場理論(Effective Field Theory)を用いて標準模型を超える新しい物理の可能性を探ることに重点を置いていました。大学院を修了した後、フランスパリ近郊のIJCLabでBelle IIグループに参加しました。Belle IIは、高いルミノシティと比較的クリーンなバックグラウンドのデータを解析できるので、標準模型を超える物理に関する手がかりとなり得る希少な崩壊チャネルの研究に理想的な実験です。私は、そこでモンテカルロシミュレーションツールの開発やデータ取得に関わる貢献を行いました。

■KEKではどんな研究をしていきたいですか?

SuperKEKB加速器は、標準模型を超える新しい物理現象を明らかにする可能性のある希な素粒子反応過程の研究を可能にするために非常に高いルミノシティ(輝度)を達成することを目指しています。しかし、この目標には、ビームの安定性を確保し、突発的なビームロス(SBL)を緩和するなど、複雑な技術的課題の解決が重要になります。特に興味を持っているのは、ビームとコリメーターの制御を最適化するための機械学習(ML)技術の応用です。機械学習は、リアルタイムでのモニタリングやビーム不安定性の予測と緩和の大きな可能性を持ちます。MLアルゴリズムをビーム制御システムに統合することで、ビームロスの兆候を早期に検知し、コリメーターをより効率的に調整できる可能性があります。これにより、SuperKEKBの性能が大幅に向上し、ルミノシティの目標達成に貢献できるでしょう。結果として、高エネルギー物理の分野で、より正確な測定や新たな発見が期待できます。

■研究や作業などで行き詰った時などの、気分転換の方法を教えてください

研究で困難に直面したり、行き詰まったりしたときは、体を動かしたり、創造的な活動をすることで、リセットし、新たな視点で問題に取り組むことができると感じています。マラソンランナーとして、ランニングをすることで頭をクリアにし、問題を整理することがよくあります。繰り返しの動作がリラックスを促し、複雑な問題について深く考える時間を与えてくれます。また、私は音楽を演奏することも楽しんでおり、フランスと香港ではクラリネット奏者としてオーケストラに参加してきました。音楽は異なる種類の精神的な刺激を与え、創造性や横断的な思考を促してくれます。これにより、科学的な問題に新しい角度からアプローチするのに役立つと感じています。KEKにいる間も、つくばでオーケストラに参加するか、他の研究者と一緒に演奏する機会を見つけて、音楽活動を続けたいと思っています。これらの活動は、私の考えをリフレッシュさせるだけでなく、研究において前進するためのモチベーションにもつながっています。


素核研でのご活躍に期待しています!

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