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【ようこそ素核研へ】和光原子核科学センター 向井 ももさん着任インタビュー
2024年10月21日
2024年8月、和光原子核科学センターに、向井 もも(むかい もも)さんが特任助教として着任しました。
原子核物理学の世界に興味を持ったきっかけ、どのような研究をしてきたのか、また研究や作業などで行き詰った時の気分転換の方法などをお聞きしました。
■原子核物理学の世界に興味を持ったきっかけは?
宇宙物理に興味があり、その分野の研究室がある大学に入りました。しかし実習の授業をきっかけに、見えない放射線を検出器で測定したり、磁場で分析したりすることが面白く、もっと実験を学びたいと思い、卒業研究では原子核実験に方針転換しました。その後、集中講義で天体現象と原子核物理のつながりを知り、原子核研究が天体現象の解明に貢献できることに興味を持ち、この分野で研究を続けることにしました。
■KEKに来る前はどこでどのような研究をしていましたか?
博士前期課程から、KEKで原子核実験の研究室を主宰していた宮武教授、鄭教授のもとで、建設が始まったばかりのKEK元素選択型質量分離器(KISS: KEK Isotope Separation System)の開発と研究に携わり、最終的に学位を取得しました。学位取得後は、大学の出身研究室の教授が主導する稀少RIリングという原子核の精密質量測定装置の実験に加わり、高時間分解能飛行時間検出器の開発や中性子過剰なNi同位体の質量測定実験に参加しました。その後、理化学研究所で再度KISSで研究を行う機会をいただき、イオンガイドの開発、精密質量測定と組み合わせた崩壊測定のための検出器開発、ヘリウムガスセル開発、中性子過剰なタングステン同位体の同位体シフト測定や187Taの崩壊分光など、様々なことに取り組みました。昨年度(2023年度)は、1年間だけ名古屋大学の工学研究科で勤め、そこではこれまでの研究で行ってきた放射線計測とレーザー分光の応用的な研究に取り組みました。
■KEKではどんな研究をしていきたいですか?
原子核の実験的研究を通じて、重い元素の起源天体環境についての理解を進めたいです。現在ネックとなっているのは天体環境中で合成されたと考えられる中性子過剰核の性質がわからないことで、実験的に性質を明らかにすることが求められています。現在は、従来の手法でアクセスが困難だった中性子過剰核を生成し分光するための実験装置であるKISSのアップグレード計画を進めています。必要となる実験技術は必ずしも確立されたものではないため、挑戦が多いですが、その分やりがいを感じています。目的核種に向けて未知核種の分光を進め、知見を積み重ねていく過程も意義があり意欲的に取り組んでいきたいと思っています。
■研究や作業などで行き詰った時などの、気分転換の方法を教えてください
気分転換には、植物の世話をしています。水加減や日当たり、風通し、害虫対策など、気にしないといけないことがたくさんあって、世話をしている間は自然と仕事のことを忘れられます。植物がうまく成長してくれたり、一度元気がなくなったものがもち直したりすると、喜びを感じます。こうした小さな成功体験が、リフレッシュの一環として効果的であると感じています。
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なお、向井さんは、令和5年度の「日本物理学会若手奨励賞(原子核談話会新人賞)」を受賞されました。この賞は実験核物理分野で優れた研究を中心的に行い、世界的にインパクトのある論文を公表した将来性ある若手研究者を顕彰するために設置されたものです。
素核研でのご活躍に期待しています!