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Belle II Physics Week 2024を開催しました

10月14日から18日まで、KEKつくばキャンパスにてBelle II Physics Week 2024が開催されました。理論分野の専門家や、Belle II実験をはじめ、欧州合同原子核研究機関(CERN)のATLAS実験やLHCb実験など他の実験からの研究者など、150名以上の研究者らが国内外から集まりました。Belle II Physics Weekは毎年開催されており、7回目となる今回は、Toshiko Yuasa Lab(TYL)、素粒子宇宙起源研究所(KMI)、日米科学技術協力事業(高エネルギー物理分野)からの支援のもと、Belle IIコラボレーションとKEK素粒子原子核研究所 理論センターとの共催で行いました。

Physics Weekは、Belle II実験のデータ収集初期の頃はBelle II実験特有のトピックや活動に重点を置いていましたが、ここ数年は、より幅広いトピックが取り上げられ、Belle II実験以外の専門家も招待されるようになりました。1週間にわたるプログラムは、「スクール」セッションと「ワークショップ」セッションに分けられ、参加者全員が活発に議論を行えるよう工夫されました。Physics Weekには毎年テーマが設定されており、そのテーマに関するあらゆる側面をカバーし、Belle II実験がその分野で果たす役割について重点的に議論されます。今年のテーマは「タウ物理」と「ダークセクター」でした。

 


Belle II実験の物理コーディネーターであり、Physics Weekの主催者の一人である、ジム・リビー(Jim Libby) 氏に話を聞きました。

Q: なぜ理論の専門家など、Belle II実験以外の方々を多く招待することにしたのですか?

リビー氏:主な理由は、理論と実験コミュニティ間の対話を促進するためです。Belle II実験の物理プログラムには他の実験にはない独自の特徴があるとして、理論研究者の間でも非常に関心が高いです。彼らとの対話により、新たに着目すべき点や私たちが取り組むべき新しい課題についての理解を深めることができます。このような交流は、Physics Weekのワークショップのセッションで行います。また、Belle II実験以外の研究者らを招くにあたり、専門家による講義も行うことで、普段専門家が少ない環境にいる人でもBelle II実験に関連する知識を深めることができる機会を設けました。

Q: タウ物理とダークセクターに関して、注目すべき成果は何ですか?

リビー氏: 注目すべき成果についてはまだ初期段階ですが、今回のPhysics Weekで、ダークセクターに関する新しい解析が発表されました。これは「非弾性ダークマター」と呼ばれる特定のタイプのダークマターを初めて測定・探索したもので、非常に複雑な解析です。まだ何も見つかっていませんが、もし発見されていれば、すでに大きなニュースになっているでしょう。私たちはこのタイプのダークマターについて初めて上限値を設定しました。一方、タウ物理では、タウ粒子に関して、世界最高水準の測定をさらに多く行える段階に入っています。ここ1年ほどでいくつかの成果があり、タウ粒子の質量をこれまでよりも正確に測定しました。また、標準理論ではほとんど起こらず、標準理論を超える新しい物理に非常に感度の高い現象を探しました。その結果、LHCを含む世界中の実験の中で最も厳しい上限値を設定しました。

Q: 今回のPhysics Weekについて、全体的な印象を教えてください

リビー氏: 主催者の一人として言わせてもらえば、今回のPhysics Weekは成功だったと思います。全体として、ワークショップでは素晴らしいアイデアがいくつも生まれ、今後実施する新しい測定につながりました。これは実質的な物理目標が設定されたことを意味します。また、実験において実際に作業を担う若手研究者、つまりPhysics Weekの主な参加者である博士課程の学生やポスドクにとっては、さまざまなセッションに参加することで多くの学びがあっただけではなく、ポスターセッションで共通の課題に取り組むことでお互いを知る良い機会になったと思います。もう一つの重要な点は、Physics Weekが二つの側面で機能したことです。一つは、参加者同士の交流やコミュニケーションを促進する側面です。研究者たちが互いに知り合い、協力することで、チームワークが強化されることはコラボレーション全体にとって非常に重要です。もう一つは、具体的なデータや新しいアイデアの共有を通じて得られる科学的な成果や研究の進展に関する側面です。

Physics Weekで行われた講義やチュートリアルについて、ロレンツ・エンニオ・ゲルトナー (Lorenz Ennio Gaertner) 氏は「スクールのプログラムとワークショップを組み合わせるのは素晴らしいアイデアです。Physics Weekでは、幅広いトピックが扱われます。参加者の中には知識があまりない人もいれば、専門家もいます。私はダークセクターについての専門家ではありませんが、スクールのセッションで多くを学び、そのおかげでワークショップのいくつかのセッションで議論に参加することができました」と振り返りました。

また、演習について、ミケーレ・ベロネッシ( Michele Veronesi) 氏は「演習では、Belle II実験で使用するソフトウェアを紹介し、参加者が自分の研究プロジェクトを始める手助けをしました。学生たちの知識レベルはさまざまでしたが、目標はこの実験に必要なソフトウェアツールの使い方を教えることでした。この環境は学生にとって非常に有益であり、物理学のキャリアを進める助けになったと思います」と語りました。

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