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【ようこそ素核研へ】EFグループ 児島 一輝さん着任インタビュー
2024年12月10日
2024年5月に、EFグループに、児島 一輝(こじま かずき)さんが研究員として着任しました。
素粒子物理学の世界に興味を持ったきっかけ、どのような研究をしてきたのか、また研究や作業などで行き詰った時の気分転換の方法などをお聞きしました。
■素粒子物理学の世界に興味を持ったきっかけは?
最初に素粒子に出会ったのは中学3年生の時でした。科学雑誌「ニュートン」の「『無』の物理学」というタイトルに興味を惹かれ、その中でヒッグス粒子に出会いました。一切の物質を排除した真空においてもなおその空間にはヒッグス粒子が存在し、「無」は実は無ではないのである、という大いに矛盾を孕んだ結論に当惑しながらも面白さを感じました。
■KEKに来る前はどこでどのような研究をしていましたか?
名古屋大学からKEKで進行中のBelle II実験に参加し、B中間子と呼ばれる粒子の崩壊を詳しく調べることで、素粒子標準理論では説明できない新しい物理現象を探索していました。B中間子は非常に短命な粒子で、安定した別の粒子へと崩壊する際に約25%の確率で「レプトン」と呼ばれる粒子を伴います。レプトンには質量の異なる3つのレプトンがあり、標準理論ではそれぞれの崩壊の確率が予言されています。この確率が理論値と異なる場合、未知の物理現象が存在する可能性が示唆されます。実際に崩壊の確率を測定すると、最も質量の重いτレプトンへ崩壊する確率が理論予想よりも高いという結果が複数の実験から報告されています。
そこで、私は、2019年から2022年までに取得されたデータを使い、機械学習を活用した崩壊粒子の再構成手法を解析に導入して、これらの崩壊を精密に測定しました。その結果、先行研究に匹敵する精度での測定を4分の1ほどのデータ量で実現しましたが、残念ながら標準理論を超える新しい物理現象は確認されませんでした。
■KEKではどんな研究をしていきたいですか?
CERNのATLAS実験に参加し、ヒッグス粒子によって形作られている真空の性質を明らかにしたいと考えています。LHC (Large Hadron Collider)加速器を使った実験は、世界で唯一ヒッグス粒子を直接生成できる実験であり、このヒッグス粒子を通じてまさに「無」の物理学を探究することが目標です。特に、まだ誰も観測していない、ヒッグス粒子が2つ同時に生成される事象を探索し、私たちの宇宙の基盤となる真空の性質が本当に素粒子標準理論に基づくものなのか、それとも未知の物理法則が関与した異なる性質を持つものなのかを明らかにしたいと考えています。
■研究や作業などで行き詰った時などの、気分転換の方法を教えてください
オーケストラに参加しており、ホルンを練習するのが良い気分転換になっています。練習中は音楽に集中でき、腹式呼吸を使うので適度な運動にもなっていると感じています。また、オーケストラの合奏練習は週末に都内で行うことが多いため、練習へ向かうのもつくばからの小旅行となってリフレッシュになっています。
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これからの、素核研での活躍に期待しています!