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HEP in the Quantum Era Workshopを開催~量子時代の素粒子物理学~

12月2日から4日にかけて、KEKつくばキャンパスで、ワークショップ「High Energy Physics in the Quantum Era」が開催されました。本ワークショップは、理化学研究所 数理創造プログラムiTHEMS(アイテムズ)とKEK素核研 理論センターが共催し、量子技術と素粒子物理をテーマに新たなパートナーシップの最初のイベントとして行われたものです。

ワークショップでは、量子状態を自由自在に扱う量子コンピューター技術の発展を踏まえ、「これらは素粒子論にどのような新しい理解を持ち込むのか」、あるいは逆に「素粒子論で培われた方法論が量子技術にどのように応用されるのか」など、さまざまな議論が巻き起こりました。素粒子論の基礎となるゲージ場の理論をどのように量子コンピューターに乗せて計算を行うか?この問いに関する講演が多く、実機を用いたシミュレーション結果も発表され、着実な進展を感じることができました。量子コンピューターはこれまでできなかった、量子状態の時間発展の計算を可能にします。この宇宙がどのようにできあがったのか、加速器実験でどのように粒子が生成されるのか、などの謎の解明への近道になるかもしれません。

量子技術だけではなく、素粒子論、特に場の量子論の解明に新しい方法で挑む手法「リサージェンス」や「ブートストラップ」などに関する興味深い講演もありました。なかには、量子力学そのものを革新しようとする意欲的な講演もありました。多世界解釈(※)による、他の世界からのメッセージを受け取る可能性など、常識にとらわれない考察が印象的でした。

他にも、エンタングルメント(量子もつれ)で2つのブラックホールを接続するワームホールを生成する、量子コンピューターで暗黒物質を発見する、といった未来を感じさせるアイデアが数多く飛び出しました。まだまだ始まったばかりの研究が多く、今後のさらなる発展に期待が膨らんだワークショップでした。

【用語解説】

※多世界解釈:量子力学の不可解さを解決するための解釈の一つ。観測ごとに宇宙が分岐し、異なる宇宙が無数に存在するという解釈で、1957年にエベレットが提唱。

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