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浦川優子准教授 湯浅年子賞(銀賞)に輝く~標準インフレーションモデルを超えた新物理探査の理論的研究~

素核研理論センターの浦川優子准教授が、「標準インフレーションモデルを超えた新物理探査の理論的研究」の業績が認められ、2024年度の湯浅年子賞(銀賞)を受賞しました。お茶の水女子大学の湯浅年子賞は、湯浅年子博士の自然科学およびその関連分野に対する功績を記念して設立されたもので、高エネルギー加速器研究機構(KEK)が日仏共同事業として運営している「湯浅年子ラボラトリー(TYL)」も協力しています。

浦川准教授は、宇宙誕生直後の急激な膨張「インフレーション(加速膨張)」の理論において、観測量の計算方法の確立に取り組みました。インフレーションを実現するには標準模型を超えた新しい物理が必要であり、どの模型が正しいかはまだはっきりしていませんが、各模型の予測と観測結果の比較によって、その詳細が解明されると期待されています。

従来の計算では、理論が予言する観測量が無限大になってしまうという問題(赤外発散の問題)がありました。これに対して浦川准教授は、一般相対性理論がもつ「因果律」を破る形で無制限に広い宇宙領域の情報に依存した量を計算していたことが原因であったと指摘しました。実際には観測可能な領域は限られているので、因果律をきちんと考慮すれば無限大は生じないことを示し、正しい観測量の計算手法を提示しました。また、近年の研究の進展により加速膨張する宇宙の赤外発散の問題が他の場の理論にも通じる深い意味をもつことが明らかになってきました。さらに、浦川准教授は、インフレーション理論における密度の小さなゆらぎに特化した議論を、時空のさざ波である重力波モードなどにも適用する試みを行っています(プレスリリース:宇宙創成「インフレーション」の謎に迫る)。

授賞理由について詳しくはこちら

 


 

受賞を受けて、浦川准教授は「このたびは名誉ある湯浅年子賞(銀賞)を賜り、大変光栄です。物理学において先駆的な業績を残された偉大な研究者であり、女性研究者の草分け的存在でもある湯浅年子先生のお名前を冠した賞を頂けることは、身に余る思いであると同時に、今後さらに研さんを積む大きな励みともなります。本賞の受賞を励みに、これからも未知の物理に挑み続け、より深い理解を目指して精進してまいります。
またこの機会に、日頃から物理の議論を共にしてくださる共同研究者や所属機関の方々、そして研究活動を支えてくれる家族に、改めて深く感謝いたします」とコメントをしています。

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