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新たな測定器開発プラットフォームを立ち上げました~極低温技術とセンサー応用~
2025年9月10日
2025年9月1日から2日間、KEKつくばキャンパスにて素粒子原子核研究所(素核研)・測定器開発センター(ITDC)が主催する「プラットフォーム-Dキックオフミーティング」が開催されました。
ITDCは、検出器開発に興味を持つ大学や研究機関の研究者が集まり、共通課題となる要素開発や情報共有を行う場として「測定器開発プラットフォーム」の運用に力をいれています。これまでに、光センサー(プラットフォームA)、半導体 (プラットフォームB)、ガス・アクティブ媒質(プラットフォームC)の3つを支援してきました。今回のキックオフミーティングは、極低温技術と低温環境下で動作するセンサーや回路開発を目的とした「プラットフォームD」を新たに立ち上げるものです。
キックオフミーティングには 56 名の参加登録があり、そのうち約 40 名の研究者が会場に集まりました。プログラムは「極低温量子計測」「センサー応用」「読み出し」「低温関連技術」の4セッションから構成され、計23件の講演が行われました。最先端の量子計測から冷凍機開発に至るまで幅広いテーマを対象に、国内の低温実験プロジェクトの現状や今後の課題、さらに本プラットフォームへの期待や要望について意見交換が行われました。実際に極低温施設の見学も行いました。
参加者からは、希釈冷凍機の利用に関する要望が最も多く寄せられたほか、液体ヘリウムに試料を浸して低温動作を確認する「ダンク試験」によるセンサー評価や、低温環境での材料特性を短時間で測定する提案もあり、プラットフォームへの期待の高さがうかがえました。また、本プラットフォームの重要な役割である情報共有のあり方として、各研究の成果に加え「失敗事例」も含めて整理・公開してほしいとの意見も出され、今後の運営に向けて前向きに検討していくこととなりました。
戸本誠(ともと まこと)ITDCセンター長は、「KEKでは、素粒子原子核実験において重要な検出器要素のひとつである超伝導磁石などのために、極低温技術の開発を古くから進めてきました。近年の量子コンピューターや量子センシングの進展により、低温技術の重要性はさらに増しており、ITDCではこのたび、極低温技術そのものと極低温環境下で動くセンサーや回路開発に興味を持つ研究者が共同で研究を行う場としてプラットフォームDを新設しました。今回のキックオフミーティングでは、コミュニティがどういった低温技術を用いた研究に関心があるのか、ITDCではどういう極低温技術を持っているか、ITDCの極低温施設を用いてどういう共同開発ができそうかを議論しました。新しいプラットフォームを通じて、低温技術や量子センシング技術が進化して、新たな検出器技術の創出につながることを期待しています。」と述べました。
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(左)1日目(右)2日目の参加者集合写真(4号館にて)
ITDCは、特定のプロジェクトに限定せず、素粒子・原子核・宇宙といった幅広い分野を対象に測定器開発プラットフォームや測定器開発テストビームラインの運用を通じた測定器開発の支援を行うことで、国際的にも極めてユニークな研究基盤を構築することを目指しています。本ミーティングを契機に、この構想を着実に実現へと進めていきます。