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高校生のための素粒子サイエンスキャンプ Belle Plus 2025 を開催しました
2025年9月12日
2025年8月5日〜8日の日程で、高校生のための素粒子サイエンスキャンプ「Belle Plus(ベルプリュス)2025」がKEKつくばキャンパスで開催されました。今年もたくさんの応募者があり、24名の高校生が全国各地から参加しました。
Belle Plusとは、KEKつくばのKEKB加速器を用いたBelle実験で実際に行われてきた最先端の研究活動を、高校生の皆さんに体験してもらうことを目的とした素粒子サイエンスキャンプで、宿泊体験型スクールとして2006年度から毎年実施しています。Belle実験は、小林誠・益川敏英両博士の2008年のノーベル物理学賞受賞に貢献しました。現在はBelle実験のデータ解析も行いつつ、KEKB加速器とBelle実験をアップグレードしたBelle II実験が行われています。
Belle Plusでは現役のBelle/Belle II実験グループの研究者による講義や施設見学に加え、以下の4つのコースに分かれて実習が行われました。
- Belle/Belle IIの実験データの中から粒子を探索する「B-Lab」班
- 宇宙線(ミュー粒子)の速度を測定する「宇宙線速度測定」班
- 自作したワイヤーチェンバーという粒子検出器を用いて宇宙線の降り注ぐ角度を測定する「ワイヤーチェンバー」班
- Belle実験で観測可能な現象を理論的に研究する「理論」班
演習では参加者は皆熱心に手を動かし、活発に仲間や講師と議論を交わしていました。
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「B-Lab」班:自分たちで書いた解析コードを使って、本物の実験データから粒子探索を行います
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「宇宙線速度測定」班:シンチレータと呼ばれるセンサーを使って宇宙線ミュー粒子の信号を検出し、得られた波形を読み取って速度を算出します
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「ワイヤーチェンバー」班:自作したワイヤーチェンバーを用いて上空から降り注ぐ宇宙線を検出し、どの角度から多く入射してくるかを調べます
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「理論」班:粒子の反応をファインマン図で表し、その過程でさまざまな物理量がどのように保存されるかを考えながら計算します
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(左)電子・陽電子衝突型加速器の世界最高衝突性能をもつSuperKEKB加速器を間近で見学します。(右)幅、奥行き、高さそれぞれ約8mの巨大なBelle II 測定器を上から見学。SuperKEKBで作られた粒子が崩壊するパターンを詳しく調べます
その他にも、加速器科学や素粒子物理学について詳しく学ぶ講義や、この分野のキャリアパスについて高校生参加者が研究者や大学院生に質問できるプログラムを実施しました。
また、2日目の夜に行われたサイエンスカフェでは、KEK広報室所属でサイエンスコミュニケーターの青木優美が「テストに出ない物理―質量のふしぎ―」と題して質量にまつわる謎を紹介し、さらに「物理12点の高校生が物理学者になるまで」と題して自身の進路選択について語りました。最後に、「夢をどんどん周りに話してほしい」と参加者へメッセージを送りました。
高校生からは、「研究者になりたいけれど興味のある分野を絞り込めない。どう選択すべきか」「研究の道とは別になりたい職業もあるが、そういうキャリアを持つ人もいるのか」といった、将来のキャリアについて多くの質問が寄せられました。
最終日には、実習の成果発表会と修了式が行われました。
参加者からの感想を一部紹介します。
- キャンプを通じて積極的に活動している仲間に出会うことができ、自分ももっと頑張ろうと思えた
- グループ内で、時には批判的に議論を戦わせて検討することの重要性がわかった
- 参加前は、素粒子の研究とは一つの分野をずっとやるものだと思っていたが、キャンプでさまざまな研究者と出会い、実際に自分でも手を動かしてみて、研究とはもっと柔軟に広がり変化していくものだとわかった
Belle Plus実行委員長の中山 浩幸(なかやま ひろゆき)素核研准教授は、「今年の高校生たちも積極的にキャンプに取り組んでくれました。今回の出会いを大切にし、これからも連絡を取り合いながら励まし合って、それぞれの道を進んでいってくれたらうれしいです」と4日間を振り返りました。
※今年のBelle Plusは、高エネルギー加速器研究機構と奈良女子大学理学部の共催で実施されました。