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【受賞】第31回(2026年)日本物理学会論文賞

三輪浩司特別教授(東北大学大学院理学研究科 教授)、高橋俊行教授、鵜養美冬准教授らの共著論文および、郡和範客員教授(国立天文台 教授)らの共著論文が、第31回(2026年)日本物理学会論文賞を受賞しました。
この賞は、日本物理学会が独創的な論文の発表により、物理学の進歩に重要な貢献をした研究者の功績を称えるために制定したものです。


■受賞論文

“Measurement of differential cross sections for Σ⁺p elastic scattering in the momentum range 0.44-0.80 GeV/c”

■掲載誌

■概要

パウリの排他原理により、同じ量子状態にあるクォークは同じ場所に存在できません。これは陽子・中性子間に働く核力の短距離で現れる斥力の原因の一つと考えられていますが、これまで実験的検証は困難でした。

三輪特別教授、高橋教授、鵜養准教授らは、大強度陽子加速器施設J-PARCの高強度ビームと散乱粒子検出器を用いて、ハイペロンの一種である、Σ(シグマプラス)粒子と陽子の散乱を過去実験のおよそ100倍の統計数である2400事象検出することに成功しました。短距離での相互作用が分かる高い運動量領域(440-800 MeV/c)での散乱微分断面積を精密に測定した結果、短距離で極めて強い斥力が現れることを明らかにし、パウリ原理に起因する斥力の存在とその「芯」の硬さを実験的に示しました。

本成果は、ハイペロン―核子間相互作用の理解を大きく前進させ、原子核物理学の発展に重要な貢献をもたらすものとして高く評価されました。

■論文についての詳しい解説はこちらの動画をご覧ください
【論文解説】物質が安定して存在できる理由の理解に貢献

■三輪特別教授からの受賞コメント

このΣ⁺と陽子の間に働く強い斥力を散乱実験によって解明することを目標に、2010年にプロポーザルを提出いたしました。その後、およそ10年にわたる検出器の開発、実験の遂行および解析を経て、このたび本論文賞を受賞することができました。実験提案当初より、散乱の位相差を決定することを大きな目標に掲げてきました。論文の第一著者である七村さん(東北大学理学研究科 助教)が優れた位相差解析を行い、その目標を見事に達成してくれました。七村さんをはじめ、この長期にわたる研究プロセスに携わってくださった多くの学生の皆さん、そして、高橋俊行さん、鵜養さんほか、共同研究者の皆さんに感謝いたします。

 


■受賞論文

“Primordial black hole abundance from random Gaussian curvature perturbations and a local density threshold”

■掲載誌

■概要

インフレーション起源の大きな密度ゆらぎが潰れることで、宇宙初期にブラックホールが形成された可能性があり、原始ブラックホール(PBH)と呼ばれています。PBHはダークマターの有力候補の一つであり、観測されたブラックホール連星の起源や超巨大ブラックホールの種としても注目されています。

郡客員教授らは、PBHの生成量をより正確に計算する理論手法として、ピーク統計と呼ばれる計算方法を世界で初めてPBH形成の計算に導入しました。この手法により、将来のPBHの観測を通じてインフレーションモデルを選別する方法に信頼できる精度を与えました。

本研究は、PBH形成および宇宙初期ゆらぎの統計的性質の理解を飛躍的に深化させ、その後の研究を方向付けた先駆的な業績として高く評価されました。

■論文についての詳しい解説はこちらの動画をご覧ください
【論文解説】原始ブラックホールの計算を根本的に改善

■郡客員教授からの受賞コメント

この研究は筆頭著者の柳哲文氏(名古屋大学大学院理学研究科 講師)のアイディアを元に、同様にブラックホール、重力理論、宇宙論を専門的に研究している原田知広氏(立教大学理学部 教授)、Jaume Garriga氏(Professor of Theoretical Physics at the University of Barcelona)、そして当時高エネルギー加速器研究機構に所属していた私の4人が結集して研究した成果です。ピーク統計の理論的手法を密度ゆらぎから形成される原始ブラックホールの生成量の計算に世界で初めて適用したことがブレークスルーとなりました。この研究の発表直後から、ピーク統計を用いることが正当な手法であるという道筋がつきました。このようにわれわれの研究を評価していただき、たいへん嬉しく思います。

 


著者氏名および受賞理由については、こちらをご覧ください。
第31回(2026年)論文賞授賞論文 | 学会活動 | 一般社団法人 日本物理学会

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