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筑波実験棟で行われているBEAST装置の最終機能試験/ KEK IPNS

2018年2月以降に予定されるSuperKEKB加速器とBelleⅡ測定器の運転開始に向け、BelleⅡ測定器の中心部に設置するBEAST装置の最終機能試験が31日、KEKつくばキャンパスの筑波実験棟で始まりました。

陽電子の衝突で生まれたB中間子の崩壊点を検出するため、PXD(ピクセル型検出器)とSVD(シリコンバーテックス検出器)という2種類の半導体センサーが設置されます。どちらも、B中間子の崩壊で生まれた荷電粒子の通過位置を測定する半導体センサーですが、衝突点のより近くに微細なPXDを新設し、それを取り囲むSVDも大型化することで、B中間子が崩壊する位置を正確に捉え、崩壊で生じる低運動量粒子の飛跡を高い効率で検出することを目指しています。

BelleⅡ実験では、ルミノシティ(衝突頻度)をBelle実験の40倍まで高めることを目標としていますが、それに伴って電子・陽電子衝突とは異なる過程で発生するバックグラウンド(背景事象)も大きくなります。このバックグラウンドには、電子・陽電子ビームに含まれる別の粒子が周囲の構造物にあたって発生する粒子や、SuperKEKB加速器から発生する放射光(X線)などがあります。これらのバックグラウンドを実際に測定し、想定された対策の範囲で問題ないかを確認するためにBEAST装置が設置されます。

クリーンルームの中で組み立てが終了したBEAST装置

クリーンルームの中で組み立てが終了したBEAST装置

BEAST装置そのものは、本番の物理ランで搭載される二つの半導体センサーの一部に加え、放射線の測定モニターなどを搭載したもので、バックグラウンド放射線による半導体センサーの損傷を知り、本番の測定に備えるために初期の運転時だけに使用されます。

この日は早朝から研究者が、筑波実験棟地下4階のクリーンルームで組み立てられたBEAST装置の周囲に集まり、BEAST装置のセンサー部分を二酸化炭素で冷やして本番と同等の環境下でうまく機能するかどうかを調べる性能評価試験を始めました。この試験は2週間ほどかけて慎重に行われ、BEAST装置が初めて一体となって動作するかを確認します。

クリーンルームの外から最終機能試験をモニターする研究者たち

クリーンルームの外から最終機能試験をモニターする研究者たち

崩壊点検出器を担当する素核研の中村克朗助教は「この試験が終われば、いよいよBEAST装置が完成し、BelleⅡの中に入れる準備が整います。Belle実験のときには放射線の影響でSVDが使えなくなり、交換が必要になりました。そんなことが起きないようBEASTの活躍に期待しています」と話しました。


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新物理を探る Belle Ⅱ実験