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日米科学技術協力事業 2006.11.09 |
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〜 SciBooNE起工式 〜 |
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ニュートリノに質量があることを調べたK2K実験の「SciBar(サイバー)」という検出器がアメリカに送られ、フェルミ国立加速器研究所(Fermilab)の「SciBooNE(サイ・ブーン)」という実験で再利用されることは以前、ご紹介しました。FermilabのWebニュース「Fermilab Today」に掲載されたピエール・オドーネ所長によるコラムを、許可を得て翻訳しました。 提案から1年で起工へ SciBooNE(サイバーブースターニュートリノ実験)は、現代の標準では電光石火と言ってもいいような、素早いスタートを切りました。実験を素早く開始するために、その実験の規模が重要でした。SciBooNEはフェルミ国立加速器研究所(Fermilab)で最も小さな測定器となる予定で、ブースター加速器からのニュートリノビームを使った研究をするために特別に建設される実験室に設置されます。また、この測定器がすでに完成していて準備が出来上がっていることも、実験の早期スタートに貢献します。昔、ある実験テーマを思いついたら、数年単位ではなく、数ヶ月で実験を進めていた古き時代を思い起こさせます。 戸塚前機構長からの手紙 ニュートリノの反応断面積を、Fermilabのブースターから得られるビームのエネルギー領域で精密に測定するために、SciBar(サイバー)検出器を日本からFermilabに送って実験を進めるという提案について前向きに検討してほしい、という手紙を当時のKEKの機構長だった戸塚洋二氏から受け取ったのは1年と少し前のことでした。(訳注:SciBar検出器については以前の記事をご参照ください)このテーマについての一般的な興味の他にも、この低エネルギー領域の反応断面積を調べることは、2009年に日本で開始予定のT2K実験にとって特別な意義があります。物理検討委員会は昨秋、この実験提案を検討し、計画を承認しました。2週間前(2006年9月20日)、建物を建設するための起工式が開催されました。2007年の夏前にはデータ収集が開始される予定です。 新しいニュートリノ研究に向けて SciBooNEは日米科学技術協力事業の高エネルギー物理学分野の中のいちばん新しい実験です。この事業は今から20年以上前に始まり、米国内の加速器を使った数々の実験や、加速器や測定器の共同研究開発などをサポートしてきました。事業が始まってすぐの1970年代後半、我々バークレイのグループ(訳注:オドーネ氏自身が所属していた)は、PEPでのTPC(タイムプロジェクションチェンバー)プロジェクトで日本のいくつかの研究機関と強力な共同事業を進めることができ、大いに助けられました。当時の共同研究者との交流は現在でも続いており、終生の友情を育んでいます。ここFermilabにおいても数々の日米共同実験がありましたが、その中でも東北大学のバブルチェンバー(泡箱)を使ってラボFで行われた実験は1980年代を特徴づける特筆すべきものでした。SciBooNE実験の代表者の一人である中家剛氏が大学院生時代に博士論文を書き研究を行なっていた、K中間子実験E799-IとKTeV(ケーテブ)実験もまた1990年代の花形でした。1979年に開始されたCDF実験は日米共同事業の中でも最も目立つもので、現在にいたるまで強力に押し進められています。 ニュートリノ物理に置ける今回の新しい出発はFermilabが日本と共同研究を行う新たな最前線となります。J-PARCのビームを用いるT2K実験と、Fermilabのビームを用いるNOvA実験は、お互いに補完するデータを出すことになります。これら二つの大実験は、将来、より長期の国際的なニュートリノ実験のプログラムを計画する際に不可欠な基礎的知見を提供してくれることになるでしょう。 (Copyright: Fermilab, 翻訳 森田洋平)
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