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last update:08/08/07  

   image エキゾチックな世界    2008.8.7
 
        〜 Belle実験で見つかった3種類の新粒子 〜
 
 
  子供の頃、川原や海辺できれいな色の石を拾って集めたりしたことはありますか? いろんな形や色の石があって、一つ一つがどこからどうやってその場所に運ばれてきたのかを考えると、想像力が膨らみますね。

クォークは物質を構成する単位である素粒子の一種と考えられていますが、1個ずつ単体で取り出すことができず、他のクォークとの組み合わせとして存在します。クォークが4個組合わさってできていると考えられる粒子が数多く見つかって、新しい研究分野が拓かれている様子についてお伝えしましょう。

色の組み合わせ

クォークに働く「強い力」は量子色力学で説明することができます。以前の記事でもお伝えしたように、原子核の中の陽子や中性子やパイ中間子など、我々の世界を形作る粒子はこれまでクォーク2個か3個の組み合わせと考えられています。

しかし量子色力学は、クォークとクォークが結びついて粒子を作る状態を計算することが極めて難しいので、どのような組み合わせの粒子があって、どんな重さになるのかを正確に予言することはできません。色の三原色の組み合わせで「白色」になる組み合わせの新粒子があるのかないのかは、探してみないとわからないのです。

Belle実験グループや米国SLAC研究所のBaBar実験グループではクォーク2個または3個でできた従来の粒子とは異なる「エキゾチック(めずらしい)粒子」を2003年から次々と見つけてきました。特に、2007年11月には電荷を持ってチャームクォークと反チャームクォークからなるZ(4430)という新粒子を見つけたことで、「クォーク4個」の組み合わせでできた新しい種類の粒子があることはほぼ確実となりました。

チャームクォークで2種類

Belle実験では、KEKのKEKB加速器が作り出した6億6千万個のB中間子と反B中間子の対がどのように崩壊してどんな粒子が現れるかを精密に調べています。崩壊の途中でB中間子がカイ−c1(χc1)というチャームクォークを含む粒子に崩壊する場合について観測し、カイ−c1粒子と1個のパイ中間子に崩壊する新粒子が2種類あることを見つけました(図1、図2)。暫定的にZ1、Z2と名付けられたこの粒子は、2007年に発見されたZ(4430)と同様、電荷を持っているので、クォーク4個から構成されることはほぼ確実です。

一方KEKB加速器では2007年12月に、電子と陽電子を衝突させるエネルギーを精密に少しずつ変え、Belle測定器で事象の反応率を調べてみました(図3)。ボトムクォークと反ボトムクォークの組み合わせの既知の粒子にはウプシロン(Υ)のいくつかの状態(1S、2S、3S、など)があります。Υがパイ中間子の対と一緒に生じる現象の反応率が10.89MeV(メガ電子ボルト)付近で高くなっており、新粒子Ybと名付けられました(図4)。この粒子もまた、従来の中間子ではない可能性が高いですが、確定はされていません。確定されればボトムクォークと反ボトムクォークを含んだエキゾチック粒子としては最初の例になります(図5)。

量子色力学の新しい展開へ

今回、チャームクォークを含む新粒子が2個みつかり、クォーク4個の組み合わせという新しい種類の粒子があることが確実、と、いえるようになりました。ボトムクォークを含む粒子の中にも従来の分類にあてはまらないものが見つかりました。計算が難しい量子色力学も、実験データが増えてくればそれだけ理解が深まります。

クォーク4個が存在するのであれば、5個や6個の組み合わせがあっても不思議ではないことになり、ビッグバン直後の超高温高密度の宇宙で、これらの新粒子がどのような役割を果たしていたのか、などの研究に弾みがつきます。

宇宙という広大な海辺には、私たちが知らないきれいな小石がまだまだたくさん転がっているのかもしれません。



※もっと詳しい情報をお知りになりたい方へ

→Belleグループのwebページ
  http://belle.kek.jp/
→KEKBのwebページ
  http://www-acc.kek.jp/KEKB/

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[図1]
今回、Belle実験グループが見つけた新粒子のうちの2種類(Z1、Z2)は、B中間子がカイ−c1(χc1)というチャームクォークを含む粒子と、1個のパイ中間子に崩壊する状態として観測された。
拡大図(17KB)
 
 
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[図2]
パイ中間子とカイ−c1粒子の組み合わせが持つ質量の分布。4,050MeV(メガ電子ボルト)及び4,250MeV付近のピークが今回発見された粒子に対応する。新粒子はB中間子の崩壊反応;B中間子→K中間子+新粒子で生成され、パイ中間子+カイ−c1粒子に崩壊したと考えられる。
拡大図(33KB)
 
 
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[図3]
KEKB加速器で、電子と陽電子のエネルギーを少しずつ変えて衝突させると、反応がどれだけの割合で生じるか(反応率)を短時間(2週間)で測定することができる。
拡大図(27KB)
 
 
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[図4]
電子と陽電子のエネルギーを変えると、ウプシロン(Υ)とパイ中間子の対に崩壊する事象の反応率が既知の粒子(Υ(5s))の崩壊事象よりも高く、新粒子(Yb)が生成され崩壊していると考えられる。
拡大図(13KB)
 
 
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[図5]
従来知られていた中間子は、1個のクォークと1個の反クォークが強い力で結合した状態として説明されている。この描像で説明できないものを「エキゾチック」と総称し、4個のクォークで構成された状態などが考えられる。
拡大図(40KB)
 
 
 
 
 

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