川合將義名誉教授、ベスト産業実用化賞を受賞

 

12月24、25日つくば国際会議場にてSAT10周年記念つくばテクノロジー・ショーケースが開催され、KEK物質構造科学研究所の川合將義(かわい・まさよし)名誉教授がベスト産業実用化賞を受賞しました。

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普通コンクリート(左)と中性子遮蔽コンクリート(右)
同程度の遮蔽性能で従来の0.67倍の薄さを実現

KEKのもつ実験施設は高エネルギーゆえに中性子を作りだすことができる一方、高速で飛ぶ中性子が放射線として発生してしまいます。この放射線が外に出ていかないようにするため、実験装置は全てコンクリートの壁で遮蔽する必要があります。川合名誉教授とハザマ技術研究所(以下ハザマ)の研究チームでは長年コンクリートの低コスト化、スリム化に取り組んできました。そしてホウ素を含むコレマナイトと含水量の多いカンラン石を混ぜたコンクリートが中性子を効率的に遮蔽することを発見しました。この成分比を元にハザマが使用するセメントと骨材、水分量などの調合法を見出しました。その結果、普通コンクリートと遜色ない強度で1.7~3倍の遮蔽性能、1.5倍の耐久性をもつコンクリートを作ることが可能になりました。

遮蔽性能の向上は、従来よりも薄い壁で遮蔽が出来ると言うことになります。実際J-PARCでは、遮蔽体そのものの厚さによってたくさんのスペースが占められており、限られたスペースで多くの実験装置を設置するには文字通り大きな障壁でした。スリム化が可能なこのコンクリートはJ-PARCの中性子分光器NOVA、大観の遮蔽体にも使用されており、実証されたことも今回の受賞理由となりました。

中性子線はがん治療にも有効であり、より広い実用化が望まれています。このコンクリートによってJ-PARCのような限られた場所だけでなく、病院のような敷地内にも中性子源によるがん治療施設建造の可能性が拓かれました。

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