構造生物学から構造生命科学へ 日本学術会議公開シンポジウム開催

 

1月9日(月)、日本学術会議(東京都港区)にて「先端的異分野融合を核とした構造生命科学の飛躍に向けて」と題した公開シンポジウムがおこなわれました。これは日本学術会議 基礎生物学委員会 生物物理学分科会の主催により、日本分子生物学会、日本生化学会、日本生物物理学会など33もの学会の協賛を得て行われたものです。構造生物学の他、医学、薬学、生化学、分子遺伝学、基礎生物学など多分野にわたる大学や企業の研究者、文部科学省関係者、学生など322名が参加しました。

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原子レベルでタンパク質の立体構造を解明し、生命のしくみを理解する構造生物学はX線結晶構造解析など様々な手法で発展し、これまでに世界中で7万種類以上のタンパク質の立体構造が解明されてきました。これらのタンパク質の構造の解明は、医薬や食品、環境向上などへの産業応用が期待されています。一方で、ダイナミックな構造変化によって引き起こされる生命現象を理解し応用につなげていくには、複合体や動態解析などのさらに高いレベルの研究が求められています。本シンポジウムでは、「理解する構造生物学」から「使う構造生命科学」へと進展させるために、学問、分野を超えた新たな枠組みが検討されました。

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第1セッションでは「構造生命科学が挑戦すべき課題」をテーマに、医学における構造生命科学の役割・必要性などが話し合われました。分子遺伝学や免疫学により疾患原因となる遺伝子やタンパク質を特定したこと、1つのタンパク質が多様な疾患を引き起こす理由が構造から解明されたことなどが発表されました。疾患原因の特定は治療や創薬につながりますが、従来の薬剤開発法では限界にきていることも指摘され、タンパク質の構造やその動態を踏まえた新たな手法の必要性が提起されました。

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続く第2セッションでは「生命科学・先端技術との異分野連携の達成」をテーマに生命科学と構造生物学の連携が話し合われました。X線結晶構造解析、NMR、電子顕微鏡、質量分析、ケミカルバイオロジー、そしてシミュレーションの分野から発表がありました。日本でも2011年より稼働しているX線自由電子レーザーなど、手法の発展により「何が求められ、何が可能となり、可能となろうとしているのか」が議論されました。

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最後の第3セッションでは「新しい構造生命科学の未来を拓くために何をなすべきか」をテーマにパネルディスカッションが行われました。醸成された分野同士が、気軽にかつ高い密度で連携していくための組織、情報拠点の必要性が提言され、その仕組み作りについて意見が交わされました。海外での研究拠点の事例や、構造解析に至るまでの実験ノウハウを積むための研修・受け入れ制度など、異分野が融合していくための仕組みについて具体的に示されました。

理解する構造生物学から使う構造生命科学へ、皆が一体となって構造生命科学を実現化するための礎となる議論の行われたシンポジウムでした。

関連サイト

日本学術会議公開シンポジウム「先端的異分野融合を核として構造生命科学の飛躍に向けて」
構造生物学研究センター

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