KEKキャラバン、12月は茨城、埼玉、高知、香川、佐賀、東京、奈良に派遣

 

KEKでは学校や社会施設などで行われる授業のサポートとして、地方自治体、NPO等の団体が企画する講習会や勉強会などに講師を派遣するプログラム「KEKキャラバン」を実施しています。12月は、茨城、埼玉(2か所)、高知、香川(2か所)、佐賀、東京、奈良に講師を派遣しました。

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放射線科学センターの波戸芳仁 准教授

12月1日(木)、茨城県石岡市立恋瀬小学校で「放射線とその影響を知ろう」というタイトルで講演を行いました。先生と保護者40名を対象に、放射能と放射線、用いられる単位、生物影響、幼児と子供への影響、放射線のリスクと他のリスク、防護の考え方とこれまでにとられた措置、重要な値について解説しました。また、授業の中で実際にサーベイメータを使って放射線測定を行いました。

講演後には「放射線に対して敏感にならない事が大事だと思いました。それよりも、日常生活の中の、たばこや肥満など、悪い要因があることを知りました」との感想が聞かれました。

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リニアコライダー計画推進室の山田作衛 特別教授

12月3日(土)には、埼玉県立川越女子高等学校で、生徒60名を対象に「素粒子から宇宙まで」の講演を行いました。講演では、身の回りの自然から銀河団に至る大きな世界と、分子・原子クォークに至るミクロの世界の階層を概説し、ミクロの世界の各階層の要点について解説しました。その中で、元素合成が星の進化に従って進むこと、超新生の爆発、原子核の種類と放射能、放射線についても説明。その後、膨張宇宙の観測がビッグバン宇宙論を導くこと、宇宙の初期の状態は、素粒子研究で解明されることを説明しました。素粒子研究には不可欠である、日本のKEKB加速器、独のHERA加速器、欧州の大型ハドロンコライダー(LHC)での実験、さらに将来に計画している国際リニアコライダー(ILC)など、加速器による実験を紹介しました。

講演後のアンケートでは「素粒子について考えることは宇宙のはじまりを考えることだということが印象に残りました」「ILCをつくったりと、将来の研究に役立つものができたり、とてもワクワクする話が聞けてよかった」といった声がありました。

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広報室の森田洋平 准教授

12月10日(土)には高知県にある私立土佐中学校・高等学校でおよそ50名を対象に、「巨大な実験装置『加速器』で探る宇宙の謎」というタイトルで講演を行いました。

天体の運動など自然の様々な現象は、物理学で学ぶ方程式によって記述することができることを説明。20世紀に基礎科学による様々な革新的な発展があったことや、消えた反物質の謎や質量の起源となるヒッグス粒子、ダークマターやダークエネルギーなどの謎に挑む加速器を使った研究を紹介しました。また霧箱実験の実習により、放射線の軌跡を目で見ることでミクロの世界の探求の手法を実感しました。

アンケートでは、「この講演で自分は初めて『加速器』というものを知り、驚きでいっぱいでした。加速器自体はアニメなんかで聞いたことがありましたが、まさかこんなに大きなものであるとは全く知りませんでした。加速器を通して人はビッグバンに少しでも近づいていっていることを感覚的に知ることができました」(高1)。「天文学、数学、物理学・・・いろいろな学問がつながっていると改めて実感」(保護者)といった感想がありました。

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講演中の様子

12月11日(日)、香川県丸亀市のギャラリー・アルテで「加速器で探る宇宙の謎」というタイトルで講演を行い、およそ20名の参加がありました。

広島大学の高橋徹准教授との対談形式により、霧箱で見る放射線などを観察しながら、加速器を使った素粒子物理学の研究についての説明を行いました。また、加速器や測定器の写真を見ながら、最先端の巨大な研究施設が持つ機能美としてのアートと、数式や宇宙の謎を解く研究そのものが持つ哲学的な側面についての質疑応答がありました。

アンケートでは、「人間が考え出した数学で物理(宇宙の原理)が説明できるというのが興味深かったです」「科学は難しい(縁遠い)と思っていたが、意外に考え(追及すること)はシンプルなんだと知って、興味深かった」といった感想がありました。

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授業中の広報室の森田洋平 准教授

12月12日(月)には、香川県丸亀市立本島小学校で「霧箱で見るミクロの世界」の授業を行いました。

小学2年生~6年生のおよそ20名を対象に、天体のような大きなスケールから細菌、ウィルス、分子、素粒子などのミクロなスケールまで人間が解き明かしてきた様々な科学の成果について説明しました。また、加速器で宇宙の始まりの謎について調べる研究についても紹介。最後に、霧箱実験によってミクロの世界の現象を体感しました。

授業後には、「霧箱のじっけんがおもしろかったです」、「小さいものを調べるとき、高いエネルギーが必ようで、大きいものを調べるとき、低いエネルギーでいいことがふしぎだと思いました」といった、感想が寄せられました。

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素粒子原子核研究所の樋口岳雄助教

12月13日(火)には2件の講演を実施しました。

埼玉県立豊岡高等学校では、生徒20名を対象に、奈良教育大学の片岡佐知子氏との協力のもと、素粒子標準理論の成立への歴史の講義およびB-lab実習を行いました。B-labとは、新しい素粒子発見のための公開データ解析プログラムのことです。講義では核力・中間子の予言、ミュー粒子の発見、第二次世界大戦からの加速器の復興や、クォーク模型の提唱、標準理論の成立、および標準理論を越えた物理の探究などについて説明しました。続く、B-lab実習では、Belle検出器の構造、エネルギー・運動量保存則、粒子探索のコツを一通り説明したあと、「粒子検出」を感覚的にとらえるために、車座になった高校生の中心にピンポン球を流しこんで、それを捕まえる実習も行いました。その後生徒たちは、寿命の短い中性のK中間子の質量計算に挑戦しました。

授業後には「今回の授業を受けて『素粒子』のことや『科学技術』のことなどを分かりやすく教えてもらい何となく理解することができました。今後もこのような事があれば積極的に参加していきたいと思います」といった感想が寄せられました。

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加速器支援センターの横谷 馨シニアフェロー

また、佐賀県の鳥栖市立田代小学校では、70名を対象に、「宇宙はなにからできているんだろう」というタイトルの講演を実施。KEKの紹介のほか、宇宙にあるものすべてが、原子・分子からできていること、それがどうしてわかってきたかを説明しました。原子・分子はさらに小さいものの組合せになっていること、それを知るには、KEKにあるような大きな機械が必要になることを説明し、最後に欧州の大型ハドロンコライダー(LHC)・国際リニアコライダー(ILC)などの巨大な加速器にもふれました。

アンケートでは「宇宙が『つぶ』で出来ていることが分かっておもしろかった」という感想が多数ありました。また、「ILCで宇宙のことがどうやってわかるのか不思議に思った」「KEKが小さな小さな小さなつぶ、電子を調べるために、たいへん大きな機械をつかうのが不思議だった」といった加速器に対する疑問が寄せられました。

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超伝導について説明する、低温センターの山本明教授

12月17日(土)東京都の自由学園で特別講演「宇宙を観る夢 科学者への夢」を行いました。生徒1000名に向け、宇宙を観ること、自然を学ぶことの素晴らしさを、経験を交え、授業を行いました。超伝導技術を例とし、超伝導による磁気浮上のデモンストレーションを行いながら、先端技術や加速器、素粒子物理学について紹介しました。

講演後のアンケートでは、「むずかしくてよく分からなかったけれど、自分の好きなことをあきらめないで続けていれば、いつか叶うことがよく分かって、私も夢をあきらめないで続けたいと思いました」

「素粒子はとても小さなものでありながら、宇宙を作る、とても大切なものだと知りました。宇宙という、大きな存在を、人間が調べてきて、その不思議をとく一端を見つけることができるというのは本当にすごいと思いました」といった感想がありました。

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素粒子原子核研究所の藤本順平 研究機関講師

12月19日(月)は奈良女子大学にて、大学生・大学院生11名を対象に、KEKキャラバンの取り組みについての講演を行いました。KEKの展開するキャラバンプロジェクトが「科学情報発信」への取り組みであるという観点から、事業の概要、これまでの展開実績を話し、実際に行った授業例から小学生向け講義を再現し、その注意点について紹介しました。

アンケートでは、「科学者は専門的な言葉を使いがちですが、わかりやすく教える事が大切なのだと思いました。しかし、やはり限度がある(詳しい所を話そうとすると、どうしても専門的になってしまう)ので、難しい所だと思いました。ちょっとだけでも興味をもってもらえたら、それでいいか(きっかけになれば)とも思います」「高エネルギー物理実験をまったく知らない人に説明するにはいろいろ工夫が必要なんだなあと思いました。話の切り口もいろいろあるなと思いました。友達に話す時の参考にさせていただきます」といった感想が寄せられました。

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