KEKキャラバン、10月は兵庫、福岡、岩手、栃木、茨城、宮城、東京、佐賀に派遣

 

KEKでは学校や社会施設などで行われる授業のサポートとして、地方自治体、NPO等の団体が企画する講習会や勉強会などに講師を派遣しています。10月は兵庫、福岡、岩手、栃木、茨城、宮城、東京、佐賀で実施しました。


講演中の山中真人 博士研究員

10月3日(水)、兵庫県たつの市の播磨高原広域事務組合立播磨高原東中学校で「宇宙の中の素粒子・元素」というタイトルで、1~3年生52名を対象に講演を行いました。

講演は、元素とは何か、素粒子とは何かという基礎の説明ではじまり、宇宙誕生から現在に至るまで、どのような素粒子や元素が宇宙の時間発展に関わってきたかを紹介しました。さらに、現在の宇宙がどういった方法で調べられており、どんな事が分かってきたのかを説明しました。
講演後のアンケートでは、「私達にとって星は数えきれないぐらいあるのに宇宙全体で考えると1%だけだとは知らなかったです」、「宇宙って分からない事が多すぎて不思議だらけでした。でも、だからこそもっと知りたいと思い、とても面白かったです」などの感想がありました。


講演中の大森恒彦 講師

10月5日(金)、福岡県福岡市のギルドカフェで「宇宙の謎に迫る!」ビッグバンを再現する巨大加速器を解き明かす!」が開催され、およそ40名が参加しました。

「加速器いろいろ」と題し、加速器そのものの魅力を伝えるメカに焦点をあてた内容で講演を行いました。まずKEKの紹介からはじめ、欧州合同原子核研究機関(CERN)の大型ハドロンコライダー(LHC)や米フェルミ国立加速器研究所、ドイツ電子シンクロトロン研究所など海外の大型加速器も紹介。そして、KEKB、大強度陽子加速器施設(J-PARC)、大型放射光施設(Spring-8)などの国内の大型加速器を紹介した後、KEKBとそこで行われているBelle実験、J-PARCとそこで行われているニュートリノ実験についての解説を行いました。その後、もっと小さな身近な加速器として、テレビ(ブラウン管)、電子レンジ(マグネトロン)、電子顕微鏡、陽電子断層撮影装置(PET)や重粒子線などの医療応用についても解説。また、加速器研究から派生した技術としてWWWも紹介しました。続いて、LHCの次の加速器として期待される国際リニアコライダー(ILC)加速器とその技術について詳しく解説しました。アンケートでは、「別の分野の研究室に進んでしまいましたが、素粒子に行きたいなー!と心がゆれるくらいのおもしろさでした」、「宇宙の謎を解明する研究はすごく夢があって素敵です。これからも頑張ってください」といった声がありました。


講演中の藤本順平 研究機関講師

10月10日(水)には、岩手県一関市役所 興田公民館にて、「宇宙をつかまえる~国際リニアコライダー~」というタイトルで講演を行い、中学生や一般の方、130名が聴講しました。

加速器の原理や、宇宙のもと「素粒子」について説明。また、リニアコライダーがどんな装置かについての解説を行いました。アンケートでは、「今日の講演を聞いて、ILCは宇宙の始まりがわかる実験ということを初めて知りました。このILCが岩手に来て、実験して、宇宙の始まりを分かって欲しいと思いました」、「ILCができて、実験が成功すれば、これからの生活にも何かしらの変化があるんじゃないかなと思った。ILCが出来て色々なことが新たに発見出来たら知りたいと思った」などの感想がありました。


講演中の橋本省二 教授

10月12日(金)には、栃木県の佐野日本大学高等学校で、生徒1000名を対象に「ヒッグス粒子発見の意味すること~素粒子と宇宙の理解はどこまで進んだか~」の講演を行いました。

講演では、ヒッグス粒子の発見は何を意味するかについて解説しました。また、素粒子の全体像を紹介するとともに、ビッグバンとのかかわりについても説明しました。講演後には、「ヒッグス粒子がどんなものか、どうやって発見したのかなど、とてもよく分かりました」、「ヒッグス粒子の発見の説明をすることとはいろいろな話を細かいところまでつきつめていかないといけないということが分かりました」などの感想が寄せられました。


講演中の研究機関講師 藤本順平

10月12日(金)には、もう1件の派遣を行いました。茨城県立江戸崎総合高等学校で3年生180名を対象に、「宇宙の謎にせまる」と題する講演を行いました。

宇宙のもとである「素粒子」がどのようにして分かってきたのかを解説。また、CERNを紹介し、ヒッグス粒子の発見についても説明しました。アンケートでは、「宇宙は粒でできているという言葉が印象に残りました」、「自分の身近に世界一の施設があったことがびっくりした。何度かニュースで素粒子は聞いたことがあるけど、詳しくは知らなかったのですごくためになる講演でした」といった感想がありました。


講演中の中村 英滋 研究機関講師

10月19日(金)、宮城県の東北学院大学で、教養学部の学生100名を対象に、「宇宙科学と素粒子物理学」と題する講演を行いました。

霧箱キットによる高エネルギー粒子線の観察、及び、加速器装置に特有の重要な部品の見学を行いました。続いて、宇宙科学と素粒子物理学に沿って、現場の立場から、人工素粒子生成のための高エネルギー加速器に重点を置いて解説しました。加速器技術発展の歴史、高エネルギー粒子の実生活への応用例と、ILC等東北地方でのビッグプロジェクトを紹介。これらのビッグプロジェクトの実現のためには、文系・理系を問わず様々な観点からの力が必要であり、聴講している学生の将来の力が必要になるという話で締めくくりました。アンケートでは、「大型加速器の応用や実生活の利用について印象に残りました」、「大規模な機械を使っての実験に職人の技術が加わって成り立っているということで多分野の協力が必要であることが意外で印象に残りました」などの感想がありました。


講演中の佐伯学行 研究機関講師

10月20日(日)、福岡県の福岡市早良市民センターで「ヒッグス粒子探索の現状と国際リニアコライダー(ILC)計画」というタイトルで講演を行い、一般の方およそ50名が参加しました。

講演では、物理学とは物の成り立ちや宇宙の起源を探るための学問で、そのために加速器が使われてきたことを解説しました。また、加速器装置の仕組みや、LHCとヒッグスらしき粒子の発見についても紹介。ILC計画、ILCが実現するとどのような研究所ができるのか、またILCよる実験でどのようなことが新しく理解できるのか、についても解説しました。講演後のアンケートでは、「円形加速器と直線加速器の違いと必要性がよく分かりました」、「ヒッグス粒子は物質なのか、波なのか、どう考えるのか分かりませんが、物理の根本が変わってしまう可能性がありそうで楽しみです」といった感想が寄せられました。

10月27日(土)、兵庫県神戸市立青少年科学館で、小学4年生~中学生とその家族を対象に講演と実験教室を実施し、講演には218名、実験教室には100名が参加しました。

午前には、「宇宙はなにからできているんだろう?」というタイトルの講演を行いました。原子・分子から素粒子にいたる物理学の発展について説明。講演では、ヒッグスらしき粒子発見の話題や理化学研究所による113番元素の発見などの最新の話題も紹介しました。午後の実験では、霧箱を製作し、放射線の飛跡の観察を行いました。アンケートでは、「物質がすごく小さな粒子というもので出来ていることが知れてよかったです。まだまだわからないことがいっぱいあったのでそういうことを解明できるようになりたいと思いました」、「宇宙はつぶからできている。この授業をきくまで考えもつかなかったので疑問がとけて何かすっきりしました(保護者)」などの感想が寄せられました。


講演の様子


霧箱実習


加速器研究施設 諏訪田 剛 准教授

10月27日(土)には、もう1件の派遣を行いました。東京都の麻布学園で、1~2年生56名を対象に、「科学者・技術者の世界」と題する講演を行いました。

前半では、高エネルギー加速器とミクロな素粒子の世界について解説しました。放射能の発見とともに歩んできた加速器研究の進展の歴史を紹介しつつ、KEKの加速器やCERNの加速器施設を紹介。また、現代の素粒子の世界がどのように変遷してきのか、そして、どのようにしてヒッグス粒子の発見に結びついたのか、という素粒子研究の最前にも触れました。後半では、今の職業に就いた理由、どのようにして進路決定をしたのかなど、自分の過去を振り返りながら私の履歴書を紹介しました。アンケートでは、「電子顕微鏡の存在に感動したが、より小さな粒子が見られる加速器があれば小さな粒子を発見できるという物理学の歴史により感動した」、「『興味を持つことが花の芽、何かすることが花の茎、成功することで花が咲く』という言葉が印象に残りました」などの感想があった。

10月27日(土)~28日(日)、佐賀県佐賀勤労者総合福祉センターで「SAGAわくわく祭(さい)エンス2012(主催:佐賀県)」が開催され、2日間で小学生とその保護者を中心に1100名を超える参加がありました。

KEKキャラバンでは28日に、加速器科学の説明と霧箱の放射線の観察のデモの説明員を派遣しました。また、サイエンスカフェ「素粒子の謎に挑む~国際リニアコライダーってなに?~」を実施し、22名が聴講しました。サイエンスカフェの参加者からは「ダークエネルギーが多く、現在はまだわかっていない物質が多いというのが印象的でした」、「あんなに長い式で宇宙の一部しかわからないなんてびっくりしました」などの感想がありました。


パネル展示と霧箱デモの様子


サイエンスカフェの講師をつとめた 藤本順平 研究機関講師

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