関原隆泰氏が第7回(2013年)日本物理学会若手奨励賞を受賞
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関原隆泰 KEK素粒子原子核研究所 博士研究員。手に持っているのは、関原氏の研究成果が掲載された二つの論文。
高エネルギー加速器研究機構(KEK)素粒子原子核研究所に所属する関原隆泰(せきはら たかやす)博士研究員が第7回(2013年)日本物理学会若手奨励賞(理論核物理領域)を受賞しました。本賞は将来の物理学を担う優秀な若手研究者の研究を奨励し、物理学会をより活性化するため設けられました。3月26日から29日にかけ広島大学で開催される日本物理学会第68回年次大会では、若手奨励賞受賞者による受賞記念講演が実施される予定となっており関原氏は理論核物理領域の受賞者として講演を行います。
関原氏が本賞を受賞するにあたり対象となった研究は「カイラル動力学に基づいたΛ(1405)共鳴の電磁形状因子と構造に関する研究」です。関原氏はΛ(1405)というハドロンの構造に注目し、共鳴状態における中間子や核子(陽子あるいは中性子)といった粒子の複合状態の大きさや形状を研究するという新たな可能性をひらきました。
我々の身近にある原子核は陽子と中性子の組み合わせから出来ています。さらに陽子や中性子はクォークと呼ばれる素粒子の組み合わせから出来ています。陽子であれば2つのアップクォークと1つのダウンクォークから構成され、中性子であれば1つのアップクォークと2つのダウンクォークから構成されています。こうした3つのクォークから構成された粒子をバリオンと呼びます。これに加え、湯川秀樹博士が予言したことでも有名なπ中間子といった2つのクォークで構成される粒子をメソンと呼びますが、メソンと先ほどのバリオンをまとめてハドロンと通常呼んでいます。
今回、関原氏が注目したΛ(1405)は1961年に発見されました。Λ(1405)はアップクォークとダウンクォーク、ストレンジクォークの3つのクォークから構成される特殊なバリオンである可能性も指摘されましたが、その質量の軽さという点から、反K中間子と核子の複合共鳴状態である可能性が有力視されていました。こうしたΛ(1405)の構造を明らかにするためには、その空間的な拡がりを算出する必要がありました。一方、共鳴状態では、その粒子の状態を示す波動関数が遠くまで広がっているため、波動関数をつかっての算出ができません。
今回の研究成果を解説する関原氏
そこで、関原氏はΛ(1405)が反K中間子と核子の複合共鳴状態であると仮定したときの、2つの粒子の「散乱振幅」と呼ばれる量を用い、陽子などハドロンの大きさを測る際に用いられる「形状因子」を計算した結果、クォークを主成分とするハドロンの典型的な大きさである10-15mを優位に超えて広がっていることを明らかにしました。この成果はΛ(1405)の構造を解明しただけでなく、共鳴状態とされる粒子の大きさを測る手法により特殊な構造を持つハドロンの大きさや形状を研究する新たな方向を示したと評価を受けました。
研究成果は米国物理学会の発行するフィジカル・レビュー誌(Physical Review)と欧州の論文専門誌フィジカル・レターズ誌(Physical Letters B)の世界的権威ある二大論文誌に取り上げられました。
関原氏は現在、KEKの素粒子原子核研究所の理論センターに所属しハドロン理論研究に取り組んでいます。今回の研究成果が、ハドロン理論の一層の発展に寄与することが期待されます。
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