KEK公開講座「陽電子科学の最前線」開催される

 

2014年6月19日


講演に熱心に聞き入る公開講座の参加者

6月7日(土)小林ホールにてKEK公開講座が開催されました。KEK公開講座はKEKの研究で蓄積された知見を一般の方に広く紹介し、興味関心を持っていただくことを目的に毎年実施しています。今年度も2回の開催が予定されており、その第1回目として、「陽電子科学の最前線」をテーマとした二つの講演を行いました。

東京大学の浅井祥仁 教授による「反物質で迫る素粒子の世界」と題した一つ目の講演では、電子の反物質である陽電子の存在を説くアインシュタインの特殊相対性理論の解説から始まりました。陽電子と電子からなる「一番軽い原子」であるポジトロニウムの寿命やそのふたつの異なる状態のエネルギー差を測定した実験の最新の結果と、この実験が進めば更に余剰次元の解明など、新たな物理法則の解明にもつながることが紹介されました。

二つ目は「陽電子-身近で役に立つ反粒子 ~がんの診断から物質最表面の原子配置決定まで~」との題で、KEK物質構造科学研究所の兵頭俊夫 特定教授が講演を行いました。まずは、基礎科学の対象であった陽電子が、現在PET装置としてがん診断に用いられていることや、さらにその原理が紹介されました。また、陽電子の固体表面に斜め入射させると、全反射されて内部に入っていかない、という性質を説明し、固体最表面の原子の配列を高感度に調べる低速陽電子実験施設における最新の研究成果を紹介しました。

今回の公開講座には140名の方にご参加いただき、講演後も質問者による列ができるなど、陽電子を用いた物理学の展開と最先端物質構造解析への応用に関心を持たれた方が多かったことが伺えました。


ポジトロニウムの物理を解説する浅井氏


陽電子を用いた結晶の表面構造解析を説明する兵頭氏

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